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小津安二郎監督の「お早よう」を見て



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.252

1959年制作の「彼岸花」に次ぐカラー映画だが、最新型のデジタル・リマスターで鑑賞したので、屋外も室内も洋服もインテリアも驚くほど精妙で美しい。

出てくる場面はいつもの廊下と突き当たりの玄関、4丈半と6畳の居間なのに、例えば時計と花瓶とが補色関係でカラーコーディネートされていて、物語の内容や進行は別にして見ている目が見ることの快楽で打ちふるえていることがわかり、それが小津映画の本質であり、小津を見ることのせつないよろこびそのものなんだ。

で肝心の内容の方だが、向こう三軒両隣のおばはんとかその息子なんかが出てきて、おでこをつついたら屁がぷーと出るとか、家でテレビを買ってくれないのでむくれているうちに笠智衆の父親に起こられて沈黙ストライキに入るというような他愛もない話で、その他愛もない話を血が咲きの茅ヶ崎の旅館に籠った野田高梧と小津が酒も飲まずに鉢巻き巻いて必死で書き継いだ笑話だから、あまりにも理知走り過ぎている。

そもそもが「東京物語」のような深刻な大テーマの映画ではないので、むしろあんまり面白くもない軽喜劇をさらり作りおおせたというところに、この類を見ない大人の監督のいわゆるひとつの至芸を見たと思ったらよろしいのだろう。


口丹波春の綾部の寺山にふわり浮かびしギフチョウの羽根 蝶人



# by amadeusjapan | 2012-05-23 13:34 | 映画
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