人気ブログランキング | 話題のタグを見る

晴風万里

夢は第2の人生である 第14回




西暦2014年如月蝶人酔生夢死幾百夜


はげ山の頂上に「トリスタントイゾルデ」の愛の死が鳴り響く。劇伴はカラヤン指揮のウイーンフィル。歌っているのは私の隣にすっくと佇立するジェシーノーマン。私はその巨大な体躯から流れ出る太い歌に震撼させられた。2/27

荒野の真ん中でさながらさすらいのガンマンのようにたたずんでいるのは、マガジンハウスの「ターザン」でレジェンドと称された辣腕ライターだったが、私がいくら覗き込んでも、テンガロンハットに隠されたその蒼ざめた相貌を伺い知ることはできなかった。2/27

中国を訪問していた私は、なぜか某国の第一将軍に擬せられ、両国の歓迎祝祭儀式の先頭に立って双方の国歌斉唱を聴かされる羽目になったのだった。2/26

新しいスタジオが完成したというのに、私たちはそこをライヴや録音に使うことも許されず、管理者は夜な夜な催すパーティだけに使用しているのだった。2/25

警官隊の突入を前にして、私は彼女と一緒に居るべきだと考えているのだが、もしも彼女がそう思っていないとすれば、それを強要すべきではないとも思い、さてどうしたものかと、心は千千に思い乱れるのだった。2/25

「今日は村上春樹さんにお引き合わせしますから楽しみにしていて下さいね」、という広報の前田さん他1名と一緒に真っ白に塗られたエレベーターに乗っていたのだが、なぜか私はだんだん呼吸困難に陥り、扉が開くや否やその場にしゃがみこんでしまった。2/24

最新型のウエラブル眼鏡型端末を装着しながら試験問題を解いていたら、その答えが全部目に映ってくるので、私は驚いて周囲を見回した。2/24

試験が終わってくつろいでいると、突然資生堂の販促会議の情景が映し出され、新製品の命名を議論していたので、私が何気なく「コンソート・オフ・ふぁっちょんはどう?」と呟くと、みながそれに同意したので驚いた。2/24

牧師の私が留守の間に、教会で殺人事件が起こったらしい。急報ですぐに引き返した私は、どうやって事態を収拾したらいいのか迷ったが、まずは会衆一同を落ち着かせなくてはその場に跪いて祈りをはじめた。2/23

私はどういうわけで浅田姉妹が抱き合ってシクシク泣いているのかてんで分からなかったが、どちらかといえば姉の方が美しいなあ、と思いながら見詰めていた。2/22

私が担当していたテレビドラマは視聴率も取れずさんざんな出来で終わってしまったのだが、終了後のスタッフの絶望と不安に閉ざされた暗い日々を淡々と記録したドキュメンタリー番組が好評で、それが私の今後の唯一の希望なのだった。2/22

なぜか南アルプスの山々の地図に私の名前が記されていたときいたので、豪雪がうずたかく降り積もっているにもかかわらず、その原因をつきとめようと、私は単身現地へ向かった。2/21

わが愛する尼将軍は、今度の戦争の最前線で軍勢を指揮していたのだが、突然の病で忽然と世を去った。2/20

今井さんからの手紙の「君の短歌は扼然なり」と書いてあった。扼然などという日本語はないはずだが、造語にしてもいったいどういう意味だろう。なんだか不吉な文字だなあ、と考えているうちに朝になった。2/19

峠を下りたところで、尨毛の大きな野犬と友達になった。渠は容貌は怪異だが心根はおだやかなようで、街を追放された私の傷心を慰めるために、ときどきピアノでシューマンの小曲を弾いてくれるのだった。2/19

その男は、米国のさる国家的重大事件について偽証した謎の人物なのだが、そんな世間から降りかかる灰色の疑惑などものともせずに、じゃんじゃん仕事をこなしていた。2/18

カルチェラタンの大学でバリケードが張られていたのだが、中の教室で授業があるからどうしても入りたいとがんばる女子の後について荒涼たる空間をうろうろしていると、ロシアのCMが流れていた。2/17

私は前世ではナマケモノだったので、ずっと朝まで1匹のナマケモノとしてうろうろしていた。2/16

マイナーな芝居を見に行ったら、突然妙な顔をした男が、私に舞台に立ってくれというので断ったのだが、彼はこの芝居の演出家でトイレの中まで付いてきて執拗に出演して呉れと懇願するのだった。2/15

映画評論家でもないのに私の名前が新聞にでかでかと出ていた試写会に行くと、会場の後ろには巨人族の2人が立っていたので、私がそれを撮影すると、フィルムをスタッフに取り上げられたので、頭にきた私はその顛末を詩に書いた。2/14

いままで平和そのものだったこの町も、最近はとても物騒になったので、私は切りだしナイフを常に携行するようになった。2/14

当藩の内部抗争はますます激烈なものになり、女性剣士の永原玲子嬢は長刀で斬って斬って斬りまくったために、饅頭屋は饅頭でいっぱいになったのでした。2/12

集英社に行ったらいろいろな雑誌の編集者がどんどん出てきて、名刺も持っていない私に神保町商店街を活性化して焼肉ランチを売れるようにするプロジェクトなどに参加するように要請されたが、もはや商店街にも焼肉にも興味がないので早々に退出した。2/12

この大学では就活指導と婚活を案内を同じ部屋でやっているので、ときどき混乱が起こる。ついさっきも面接指導を受けていた2人を結び付けようとした指導員が、大反発を受けていた。2/11

わが国初の国産宇宙船に乗り込んでいた私たちは、いよいよ着陸という際のトラブル発生でパニクって、窓の外に急接近する海にいつ飛び込もうかとハラハラドキドキしているのだった。

包装紙を次々に破ってゆくおじさんを、僕たち子供は呆然と眺めていた。2/10

永代橋にあるそのショップはとても居心地がよく、私は仕事もさることながらほとんど遊びの感覚でそこでの生活を楽しみ、家に帰るのが惜しいと思えるほどだったので、店の一角で寝泊まりするようになると、奇麗な女の子が毎晩訪ねてくるのだった。2/10

静子さんがとうとう5時ごろに亡くなったのに、私は会議があるというのでそのまま死の床から立ち去ってしまい、夜になってから戻ってきたら彼女の頬は冷たくなっていた。2/9

ヨハネ受難曲に続いてマーラーの交響曲第9番を延々と演奏しているので耳がタコかイカになり、「いい加減にやめなさい」といおうと思ったが、それほど酷い演奏ではないし、指揮者が女性なので、私はそのまま彼らがしたいようにさせてあげた。2/10

モンドリアンの絵画の中を漂流していた小さな♪の私は、吹いてきた風にあおられて、もんどりうって真っ逆さまに転落してしまった。2/8

高当丸に乗り組んだ私は、他の2隻を率いて戦争のまっただなかであるにもかかわらず、敵の機雷だらけの海を無事に本土まで輸送することに成功したのだった。2/7

コンサート会場で第2バイオリンが若い未熟な指揮者に反発してボコボコにしたという話を聞いた私は、演奏会の前半で帰宅しようとしていたのだが、思い直してまた自分の席に戻った。2/6

マガジンハウスの久米ちゃんから試写会の招きを受けた私は、久しぶりに東京に出かけたのだが、巨大な会場のあちこちにライオンが駆けずり回っては咆哮しているので、くわばらくわばら命あってのものだね、としっぽを巻いて退散した。2/6

健君と2人で長い時間をかけて歩きまわり、この島のもっとも美しい眺望ポイントを探し出すことができた。2/5

「いまから2時間以内にここから逃げ出せば自動殺戮装置は起動しないからすぐに出来るだけ遠くへ逃げなさい」と助言したにもかかわらず、そのジョルディーナという若い娘は逃げ出さずにむざむざ死なせてしまった。2/4

大勢の優婆塞たちが集まり、諸肌を脱いで人の上に人が登って、見る見るうちに巨大な人体ピラミッドが出来上がり、それが大空高く聳え立つのを私は呆然と眺めていた。2/3

毎朝英国のある町を発って仏国のある町まで通っている私は、自分がいったい何者であり、なぜそんなことをしているのか、またいったいそこでどういう仕事をしているのかも分からないまま、毎日そんな行き帰りを続けているのだった。2/1


なにゆえに今年の夏はまだ来ない我が家の紫陽花がまだ咲かぬから 蝶人



by amadeusjapan | 2014-06-11 10:40 |

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
by amadeusjapan
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

以前の記事

2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧