人気ブログランキング | 話題のタグを見る

晴風万里

「私が独裁者?モーツァルトこそ!」チェリビダッケ音楽語録を読む



降っても照っても第25回

「農夫が朝歌を歌うとき彼は純な音楽をやっている。彼は今日という朝がいかに美しいかを歌う。ここに芸術のもっとも深い意味がある」
「どんなテンポも表現の豊かさによって定義される。速度によってだけでなく」

「フルトヴェングラーはどんなテンポでも、間違ったテンポでさえ納得できた唯一の指揮者である」

「音楽史全体の中で、垂直に記された楽譜を、つまり同時的に生ずる音響現象の総体を、水平の流れやテンポに置き換えるそのやり方を理解していた唯一の指揮者がフルトヴェングラーである」

「カラヤンは大衆を夢中にさせるやり方を知っている。コカコーラもしかり」

「ロリン・マゼール、カントを読む2歳の子供だ」

「トスカニーニは純粋な音符工場だった」

「さてと、ムターさん、あなたがヘルベルト・フォン・カラヤン氏から学んだことをすべて忘れなさい」

「ジェシー・ノーマンは凄い声だが教養の香りがない。ポエジーの感覚がない。どこか別の惑星のような声だ。Rシュトラウスの「4つの最後の歌」はまるでゴビ砂漠の春のようだった」

「ベートーベンの5番は最低クラスのアマチュアの作品だ。終楽章はまったくひどい。間違った転調に満ち満ちている。エロイカの終楽章もひどいジョークというほかはない。また第9の終楽章の合唱もサラダ以外のなにものでもない。だがそんなサラダというものはある。それがドイツ的で、ドイツ的にひびくなら我慢することが出来る」

「マーラーは音楽史の中でもっとも痛ましい現象のひとつだ。彼は格好良く始めるがそうしたらもうやめられない男だ。いつも嘘ばかりついてきた無性格な男、つまりは人非人にすぎない。彼の交響曲第5番の第1楽章を理解したと主張するものはほら吹きで詐欺師というほかはない。マーラーなんかいなくってもまったく気にならないね」

「ストラビンスキーはディレタントの天才にすぎない。彼は生まれつき忍耐力に欠けていた。彼はこの欠陥をいつも新しい形式で補った。だから彼の音楽は様式感に欠けるところもあるわけだ」

「チャイコフスキーは真の交響曲作曲家であり、ドイツでは未知の偉大な男である。ブラームスは交響曲第1番の終楽章の冒頭のコラールでトロンボーンを用いたが、これは素人くさいやり方だ。チャイコフスキーならそれをどんなすばらしいやり方で聴かせたことか!」
「ブルックナーが存在したという事実は、わたしにとって神のもっとも大きな贈り物である。彼はあらゆる時代のもっとも偉大な交響曲作曲家である。ひびきを互いに結びつけあいながら、それを宇宙にまで形成できたものはブルックナー以外にいない」

「普通の人間にとって時間は開始と同時にはじまる。だがブルックナーの時間は終ったあとにはじまる。彼のフィナーレは全て神々しい。それは別の世界への希望、救済の希望、もういちど光をたっぷり浴びるよろこび、それは彼の音楽以外のどこにもない!」

「この男は死ぬまでとても孤独だった。彼があれほど多くの美しいものを生み出したのは自分の死を超えているということの答えだ」

「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団はすばらしい。アメリカ流の打てば響くヴィルトーゾ風のオーケストラだ。しかしフルトヴェングラーの厚みのある響き、あの純ドイツ風の響きはどこへ行ったのか?」

「ウイーンフィルは凡庸だ。音楽の生き生きとした流れというもの、主題の展開や織り成し、また構造というものをまるで理解していない。ひどいごった煮ですべてはメゾフォルテだ。たんなる砂糖漬けの果物だ」

「わたしを不幸にするものは他人の不幸である」


「楽の音は美を真実に導く。音楽とは自由の体験以外の何者でもない」


―セルジュ・チェリビダッケは1996年8月14日に死去した。彼の墓はパリ郊外のラ・ヌーヴィル・シュール・エソンンヌにある。



by amadeusjapan | 2007-06-14 08:19 | 読書

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
by amadeusjapan
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

以前の記事

2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

画像一覧