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晴風万里

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ある晴れた日に 第77回


現金をゴミ箱の中に捨てていた不思議の国に生きている息子

金捨てる息子の生きる不可思議な世界を知りてまた驚きぬ

横顔が母に似ているなと思いながら息子の顔を見ている私の顔

障碍を持つ長男の髪を切る鎌倉2小の同級生かな

私と障碍のある長男を並べて髪切る小林理髪店

世界と私との戦いではおそらく私は息子の側に立つだろう

しかすがにてふ枕詞思い出したりシカスガオの歌ききて

お位牌のチンは横からそっと打つのよと母がいう

亡き父の鞄の底に眠りしは肩書のない一枚の名刺

父死にて泣けぬ我かと案じしがとどまることなく涙流れたり

大股を開いてメール打つガンガン娘は災いなるかな

「お父さんは好きか嫌いかどっちなの」に遂に答えられぬ柳美里

なんの根拠もなく絶対生きているという言葉にすがりつく哀れ

美しきうわべの貌をひとめくり心はいかに美しき人か

新宿の天丼てんやで五〇〇円の天丼食らうアメリカ人カップル

文学の巨星なれど医学の巨悪人間森林太郎をいかに位置づけるべき

なにゆえによきひとさきにゆくならむむらさきいろのあじさいさくひに

ポネル死してオペラまた死したりその雲居の声に残響に耳を澄ます

はじめに女ありき そこから始まった日本私小説 

ブロンドの謎の少女も叔父上もおのれもすべてうつせみにして

ライバルの御家人どもをなぎ倒し最後は自滅のああ伊豆豪族

ピッチには一度も立てずアフリカの歌をうたいし選手のこころ

野に山にノウゼンカズラの花咲けば狂乱の夏いまぞ来にけり

1200円の三浦スイカを食べにけり

シューマンの象徴の森深く分けて入る

おたま食らうヤマカガシ殺したるおぞましさ

ジャワ更紗サラサはスカンポの柄に似て

いくたびもカラス何代目あらわれては消え

佃煮にして食べたき魚泳ぎけり


ねえお母さん 茗荷と紫蘇が獲れる庭はいいね 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-31 08:38 | 詩歌

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第13回



bowyow megalomania theater vol.1

10月29日

お母さんが、弟の純君を叱りました。
「こらっ、純。もっとちゃんとご飯を食べなさい」
僕も言いました。
「こらっ、純。もっとちゃんとご飯を食べろ!」

 そして、僕は、純がちゃんとご飯を食べないし、お母さんに純のことばかり注意するので、頭にきて、純の頭をごっつんと殴りました。

純は、びっくりして僕の顔を見ました。お母さんは、
「岳がほんきで怒ってるよ。マジだよ」
と言ってたいそう驚いて
「純君、どうしたの、なにが気にいらないの? どこか具合でも悪いの?」
と聞きました。

「ううん、僕どこも悪くないよ。大丈夫ですお」
と答えると、お母さんはなおも僕のことが心配になったようで、急に僕の機嫌を取ろうとするように、
「岳君、どこか遊びに行きたいところがあるんでしょう?」
とカマを掛けてきたので、僕が
「火星社書店」
と答えると、お母さんはもう一度びっくり仰天して
「そ、それは高尾山の麓の本屋さんじゃないの。あそこはあなたがもっと小さい頃に日曜日ごとにさんざん行ったところじゃないの。そんな遠いところじゃなくて、もっと近いところで岳が行きたいところがあるでしょ?」
と言ったので、
「それじゃあ川崎の岸さんちへ行きたいお」
と言ったら、お母さんはまたまたあわてて
「川崎も遠いよね」
と言ったので、
「それでは僕は大船のイトーヨーカ堂に行きたいです」
と言ったら、お母さんは思わず両手を胸の前でパシリと打ち合わせて、
「よおーし、じゃあ岳君、イトーヨーカ堂へ行こう。行こう、行こう、みんなで行こう!」と大声で叫んだので、僕は「僕は岳ちゃんではありません。岳君です!」
と言いました。


1200円の三浦スイカを食べにけり 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-30 09:50

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第12回



bowyow megalomania theater vol.1


10月28日 曇

今日は朝から風邪気味でした。

具合がとても悪いので、流れてきた「イチョウまんじゅう」の箱をぼんやり眺めていたら、突然目から火が出ました。

現場監督の長島先生が僕をぶん殴りました。僕の頭をぐあんと殴ったのです。

僕は目からバチバチと火を出しました。それからあんまり痛かったのでわあわあと言って泣きました。そしたら、
「いつまで泣いてんだ。バカ」
と言ってまた長島先生が僕を殴りました。

今度はほっぺをぶん殴りました。すごく痛かったので、また泣こうかと思いましたが、また泣くと、また長島先生にぶん殴られると思ったので、僕は必死で泣きませんでした。

いっしょうけんめい泣くのをこらえました。ヒックヒックと言ってこらえました。

長島先生は嫌いだ。長島なんてぶっ殺してやる。



美しきうわべの貌をひとめくり心はいかに美しき人か 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-29 22:14 | 創作

柳美里著「ファミリー・シークレット」を読んで



照る日曇る日 第360回

どうやらこの人はいいしれぬ苦悩に陥っているようです。そうして、それがどういう苦しみであるのか、またその苦しさがどこからやって来たのかについて、この人の苦難に満ちた来歴が、あるいはまたその絶望的に悲惨な日常生活の断片が、啼くがごとく、恨むがごとく延々と語り続けられるのです。

幼い時から父親の家庭内暴力の被害に遭い、世間からも迫害されてきたという作者は、様々な小犯罪やリストカット、自殺未遂を繰り返しながら、おのれを護持するために懸命に小説を書いてきたそうです。

しかし不幸なことに、40歳を超えた今日も過去のトラウマから解放されず、新しい連れい合いからは連日殴る蹴るの虐待を受け、しかしながら前夫との間に出来た最愛の息子に対しては時として暴力を加え、夜は寝られず、精神には異常をきたし、とうとう著名な精神分析者のカウンセリングを受けることになります。

そうして何度かの濃密なセッションを通じて、次第に作者の精神的な障碍の構造があきらかになり、長年にわたって音信不通であった父親との再会が実現し、(それらの「家族の秘密」はすべてあからさまに小説の中で公開されるわけですが)、幼い時から奪い去られていた「愛」を取り戻すためのささやかな試みがようやく開始されるかにみえるところで、本書はなんとかハッピーエンドの姿を取ろうと努めるのです。

けれどもまばらな拍手にこたえるべくカーテンコールによろばい出た作者の、鎌倉雪の下カトリック教会で聖体拝受にあずかる疲労困憊した姿や、横浜弘明寺商店街を彷徨する幽鬼のような姿は、とてもこの世のものとは思えません。

複雑な少女時代に「碧いうさぎ」の刻印を受けた酒井法子や、わが子を川に投じた畠山鈴香に自分の分身を感じるという作者の赤裸々な言行録は、読む進むほどに痛ましさがつのり、「親の因果が子に報い」などという古いことわざが、あたかもアポロンの不吉な神託のように聞こえてくるので面妖な心地さえしてくるのです。

いずれにしても、ほとんど精神の決壊寸前に立ち至ったこの俊秀の一日も早い拝復を祈らずにはおれません。

「お父さんは好きか嫌いかどっちなの」に遂に答えられぬ柳美里 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-28 07:22 | 読書

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第11回



bowyow megalomania theater vol.1


10月27日

星の子学園に行きました。

僕の住んでいる街でいちばん有名な「イチョウまんじゅう」の箱を折りました。

流れ作業です。最初にのぶいっちゃんと洋子がタテ折りだけして、次にひとはるちゃんと文枝がヨコ折りして、そこから回されてきたA4くらいのイチョウの絵が描かれたリサイクルペーパーを、僕と吉本公平君の2人がもういっぺんタテヨコきれいに折り直して化粧箱に組み立てます。

朝9時からお昼休みをはさんで午後5時までそればっかりやってる。やらされてる。

僕はとても不器用な人間なのですが、それでも毎日毎日やっているうちにだんだん上手になってきましたが、僕は結局なにをやっているんだろう。それが全然わからない。

朝から晩まで箱を折り続けているので、それでとても疲れます。

働くことは疲れることです。僕はもう働きたくありません。働くことは嫌になりました。

働くことが好きで上手な人だけ働いてください。


♪新宿の天丼てんやで五〇〇円の天丼食らうアメリカ人カプル 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-27 08:35 | 創作

文化学園服飾博物館で「世界の更紗」展を見る



茫洋物見遊山記第35回&ふぁっちょん幻論第60回

更紗と聞けば、♪スカンポ、スカンポ、ジャワ更紗という歌を遠い日にどこかで聞いたことを反射的に思い出します。

調べてみると北原白秋作詞、山田耕作作曲の「酸模の咲く頃」という小学唱歌でした。正式には、次のような素敵な歌だったのでここで全国のよい子の皆さんとご一緒にのどちんこを全開しながら大きな声で合唱してみたいと存じます。

♪土手のスカンポ ジャワ更紗 昼は蛍がねんねする 
僕ら小学1年生 今朝も通って また戻る 
スカンポスカンポ川のふち 
夏が来た来た ドレミファソ

みなさん、いかがでしたか。ちゃんと歌えましたか。とってもいい歌ですね。
特に「昼は蛍がねんねする」というところと、最後の「夏が来た来たドレミファソ」というコーダはあーだこーだを許さないとてもチャーミングなもの。昨今の、歌詞が聞こえない、出鱈目英語入りのあほばかポップスなど足元にも及ばぬ白秋&耕作ゴールデンコンビの至高の境地でしたね。

私はこのスカンポソングをハミングしながら楽しく「世界の更紗」展を見物しました。展覧会のチラシによれば、更紗とは「主に木綿の布に手描きや型を使って文様をあらわしたもの」を指すそうですが、織りでなくなく染めで文様を作るところがポイントです。

原産国はインドですが、たちまちジャワ(インドネシア)近辺に飛び火し、ここから17世紀の大航海時代の東インド会社の貿易ルートを経由して、東は中国、日本、西はヨーロッパ、ロシア、中東、アフリカまでほぼ全世界に伝播していったようです。

それにしても同じ文様をアレンジしながらジャワ更紗、ペルシア更紗、アフリカ更紗、フランス更紗、日本更紗のおそろしく微妙で多彩な差異よ! ここに統合を夢見つつもけっして単一化されざる世界文化の一典型があるようにも思われます。

なおこの興味深い展覧会は新宿の文化学園服飾博物館にて9月25日まで開催されています。


♪ジャワ更紗サラサはスカンポの柄に似て 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-26 12:31 | ファッション

由比ヶ浜海水浴場にて



バガテルop128&鎌倉ちょっと不思議な物語223回

今日も朝から猛烈な暑さです。午後の遅い時間に、例によって家族3人で、今年3回目の海水浴に出かけました。

由比ヶ浜の海岸には黄色い旗が立っていました。それほど波が高くないのにどうしてだろうと思っていたら、中央監視所からアナウンスがありました。
「今日は雷警戒警報が出ているので遊泳注意になっています。あまり沖には出ないようにしてください。それから海岸では決まった場所以外での喫煙はやめましょう」

そういえば今年の4月から神奈川県の喫煙条例が施行されたので、こういう放送をしているのでしょう。従来から海岸でプカプカ煙草を飲む連中には頭に来ていたので、この規制は大賛成ですが、ライフガードの人たちは例年にも増して大忙し。去年は大波で若い学生を溺死させたのですが、今年は海に加えて陸地でも目を光らせなければならなくなりました。

私たちはいつものようにライフガードの人たちがたむろしている監視所のすぐそばに陣取りました。これなら泳げない息子が浮輪で遠くまで行ってもすぐに助けてもらえます。

息子はもうとっくに星条旗のデザインの派手な浮輪に乗って波間にゆらゆら浮かんでいます。私も海に入りました。先日の花火大会のせいでしょうか、海水が濁って少しゴミがういています。(花火大会の後にはトラック何台分もの物凄いゴミが出て、毎年市の職員やボランテイアが総動員で片付けるのですが、大変な重労働だそうです。)

しばらく進むと次第にきれいになって中指くらいの大きさの魚がたくさん気持ちよさそうに泳いでいます。これを佃煮にしたらさぞやおいしいだろう、と思って両手ですくおうとしたのですがそうは簡単に問屋が卸さないのでした。

辺りを見回すと男女のカップルと家族連れが半々くらいでしょうか。みんな思い思いに楽しく遊んでいます。今からざっと700年前の和田の合戦で討ち死にした若武者たちの骨がおよそ5メートルの深さに眠っている砂浜の上では、褐色の肌の筋骨たくましいアフリカ人の青年が若い女性にフランス語で声を掛け、あちらではいかにも色男風のイタリア人が長身のモデル風の日本人女性を英語でくどいていますが、これまたそうは簡単になびいてはくれないのは北条氏の陰謀に斃れた武士達の怨念ゆえであることを、彼らは永久に理解できないでしょう。

私が海水浴に来るのは海で泳ぎ、瞑想にふけるためです。太古私の祖先が生まれた海に肌近く接し、海と風の声を聴きながら過ぎた過去を悔み、静かに物思いにふけるためですが、その大いなるさまたげになるのが海の家からの騒音。DJだかあほだらミュージックだか知らないがアルコールをあおりながら傍若無人に踊って叫んで騒音をまき散らして喜んでいる破廉恥漢々はどこか無人の山奥か都会のビルの地下室に直行してほしいものです。

♪佃煮にして食べたき魚泳ぎけり 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-25 09:36 | 鎌倉案内

高橋源一郎著「「悪」と戦う」を読んで



照る日曇る日 第359回

どうやら作者にはいわゆる「発達障碍」の子どもが身内に居るようで、その切実な個人的な体験が、偉大な「ドンキホーテ」を想起させるこの気宇壮大な哲学的ファンタジー小説を生みだしたことは間違いないようです。

作者自身を思わせる父親には3歳のランちゃんと1歳半のキイちゃんという2人の男の子がいるのですが、このキイちゃんの言葉の発達が遅れているので父親はとうぜん心配するわけですが、母親はおおように構えている。

しかし不思議なことに、ろくに言葉を発しないキイちゃんの意思を、ランちゃんだけは的確に読み取り、いわば「親をしのぐ介護者」として叡智に満ちた大人のようにふるまうのですが、ある日彼らの前に超絶的な魅力を持った少女が登場するところからこの小説の発熱と激動がはじまります。

じつはこの少女は顔容のみ奇形ですが、他の部位はまるでモデルのように非の打ちどころのない完璧な美形なのです。生まれながらに天から授かったこの悲劇に耐えてきたミアちゃんの母親は、公演の片隅で「わたしは「悪」と戦っているのです」と父親に囁く。ここまでが本作の見事なプロローグです。

ここで彼女がターゲットにしている「悪」とは、障碍という不公平を地上にばらまいた天とその障碍をネタに迫害する世間の双方です。彼女と娘のミアちゃんには彼らがこうむった不当な悪に対して抗議し、反抗し、もしかするとその正当な復讐を要求し実行する権利があるのかもしれません。

しかし彼女は、天と世間への怨嗟や異議申し立てを健気にも押し隠し、正体不明の巨悪にやむを得ず立ち向かわざるを得ない自分の孤立無援の思想を、あたかもチャイコフスキーの6番目の交響曲の最終楽章のように奏しているようです。

物語はさらに進み、作者は世界中のいたるところに、この世界とこの世界に住む人間たちの「悪」を発見します。世界も世界の創造者も、それ自体が善悪を超越した存在であるために、ミアちゃんのような犠牲者は次々に生まれ、世界の住人たちも負けじと数知れぬ犯罪を引き起こし、その悪の連鎖が、またしても無数の悪と敵意と復讐の連鎖を生みだしているのです。

これらの諸悪を必罰懲戒せんとする正義の味方・善玉ボスから強いられて、なぜか悪玉暗殺者になってしまったランちゃんのところには、これまで人類のせいで惨殺されたシロクマやゾウたちまでもが、「千人一殺」(責任者全員ではなく任意の誰かだけを殺害すること)の復讐を要求して詰めかけます。

たった3歳の男の子が、世界を破壊しようとする悪意の持ち主を、みずからの判断で見ぬき、サイレンサーでプシュッと消さなければ、これまで世界中の善意の人たちがかろうじて守ってきた平和と秩序が決定的に破壊されるという極限状態は、どこかカフカの「世界と君との戦では、君はどちらを支援するか?」という名高い設問を想起させます。

いまや悪の象徴と化した最愛のミアちゃんを、わが幼いヒーローは果たして自分の手で消せるのか? それにしても、いったいなにが悪でなにが善なのか? 悪にも正義があるように、善にも不正があるのではないだろうか? ほんとうの幸せはどこにあるのだろうか? 

かつてドストエフスキーが問い、宮沢賢治が問うたこの難問に、今一度われらが高橋源ちゃんも鋭く問いかける。これは古くて新しい普遍的な人倫小説の平成新装版と言えましょう。


世界と私との戦いではおそらく私は息子の側に立つだろう 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-24 13:49 | 読書

ギュンター・グラス著・池内紀訳「ブリキの太鼓」を読んで



照る日曇る日 第358回

現代ドイツ文学の最高峰の若書きとしてあまねく人口に膾炙する本作ですが、いったいどこがどう面白いのか理解に苦しみます。

3歳の時に地下室に転落して以来成長を拒否した主人公が故郷ダンツヒを舞台に第2次大戦の戦中戦後をアクロバチックに怪しく生き延びるピカレスクロマンにして20世紀のビルダングス浪漫、なのではありましょうが、それらのやっさもっさが著者の切実な戦争体験に基づく政治的性的ドキュメンツなのだとしたところが、それがいったいどうしたのさ。

それでも新工夫を凝らそうとする著者は、主人公の言動を、「オスカル」と「ぼく」に2分化して描写しようとしているのですが、ではこの3人称と1人称をどのように区分けし、どのように統合しようとしているのかが読めどもてんで分からない。いかにも20代の若造の考えそうなアイデア倒れに過ぎません。

もしかするとヒトラー・ユーゲントに入っていた前歴を2重人格的に複合化(ナチと非ナチの自分)しようと思いついたのかも知れませんが、このように重大な事実を著者が告白したのはようやく06年になってからのことでした。

あまり否定的なこと挙げばかりでは公平を欠くので、無理矢理面白そうなことをとりあげると、この主人公のいちばんの執着は女性のスカートの下の匂いで、祖母のそれからはじめって恋人や看護婦のその部分への異常なこだわりが随所で執拗に描写されているのはそれほど変態的でもなく、人間の本質を外貌ではなく肉体生理に求める文学者らしいフェチ嗜好として微苦笑しつつ読み飛ばすことができます。

そういえば、昔これを原作としたフォルカー・シュレンドルフの映画を見たことを思い出しましたが、オスカルの太鼓連打で教会の窓ガラスが粉砕される光景がことのほか印象的で、あのような武器を欲しいと今でも思わないでもありません。



一斉の太鼓連打で宿敵打倒恩敵退散 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-23 07:37 | 読書

グラモフォン盤「シューマン全集」を聴いて



♪音楽千夜一夜 第152夜

ショパンと並んで今年はロベルト・シューマン(1810-1856)の生誕200年記念に当たるためにこのような大きなコレクションが続々発売されています。

交響曲はガーディナーと革命浪漫交響楽団の演奏ですが、ロマン派を古楽器で演奏するのは邪道につきゼロ評価となりますが、フィッシャア・デイスカウとエッシェンバッハを主力とする歌曲大全集が抜群に面白く、シューベルトと同様やはりロベルトは歌の詩人であることがよく理解されます。シューベルトもシューマンも歌曲においてもっとも重要なな仕事ができたわけで、その他のジャンルの作品は別になくても構わないと放言したら本気で怒るひともいるのでせうね。

時折エディト・マチスの可憐な声も入ってくるのですが、バリトンとソプラノに寄り添うエッシェンバッハのピアノ演奏の見事なこと。全35枚のうちでこの9枚の歌曲集がもっとも聴きごたえがありました。

ともかく1枚258円の廉価版なのであとはおまけのつもりで聴きましたが、室内楽のハーゲンカルテット、私のひいきのボーザールトリオ、クレメル&アルゲリッチも悪かろうはずがありません。ピアノの名曲の多くをポリーニが弾いていますが、牛刀割鶏の嫌いあり。シューマンの含蓄ある音楽をどうしてこのような神経衰弱患者が弾き急ぐのでしょうか。この名人は(ミケランジェリと同じく)音楽に無知なピアノの技術屋にすぎず、ショパンだろうがベートーヴェンだろうがシューマンだろうが同じことで、ただただ物理的な音響の連鎖を切ったり張ったりして粋がっている。

げいじゅつなんて昔も今も河原乞食の芸、サーカスの曲芸、いかがわしい小手先の魔術とおんなじなんだから、それすらわかろうとしないなまじインテリゲンチャンな藝術家がいちばんハタ迷惑なのです。この男はもいちど生まれ直してきてバックハウスやコルトーやサンソン・フランソワやホロビッツ、ポゴレッチ、サイなどのアホなところをたっぷりと外部注入しないと、世の心ある人は聴いてくれんだろう。いまだまされているのは耳無芳一的トウシロウばかりだよ。

音響には強いが音楽とは無縁の世界でボケることさえできずに醜態をさらしているポリーニと比べると明らかにシューマンらしい音を並べていたのが意外にもアシュケナージ。どこのオケを振っても下らない演奏しかできない指揮など一日も早くやめてもっとピアノの録音をいれてほしいと思いました。(これはエッシェンバッハ、バレンボイムも同様)。

シューマンの象徴の森深く分けて入る 茫洋
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by amadeusjapan | 2010-07-22 07:24 | 音楽

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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