「ほっ」と。キャンペーン

晴風万里

<   2014年 03月 ( 31 )   > この月の画像一覧




「続続々なにゆえに」~西暦2014年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧



ある晴れた日に第212回


なにゆえにたやすくデジカメは故障する消費税前に7900円のを買おう

なにゆえに中韓の悪口ばかりいう隣の国とは仲良くするべし

なにゆえにせっせと大根を栽培する市民のための十二所果樹園なのに

なにゆえに人は地獄に落ちるのか天国に這い上がれるとあかすため

なにゆえに軍艦の色は灰色か人を殺すは憂鬱なるゆえ

なにゆえにあの暴漢ヤクザを放置したのかわれに一丁の凶器拳銃ありせば

なにゆえに女流ヴァオリニストは谷間も売るのか見せつけるのは音楽だけにせよ

何故紅旗征戎非吾事笑而不答天地水明

なにゆえに集団自衛権を容認すそは憲法擁護義務を定めた99条違反なるを

なにゆえに貴女なる言葉が死語となった貴い女性がいなくなったから

なにゆえに国はどんどん右傾化するのか「ま、そのおー」左脳が衰えているので

なにゆえに朝口臭が噴き上げる私も世界も腐りかけているから

なにゆえに見つからないのか幻のオレッグ・カガンのバッハ無伴奏ソナタCD

なにゆえに渾身のワンカットが生まれるのか深紅のカーディガンと細字の手帳より

なにゆえに世紀の大発見に影が差す話題の理系女が非常識だから

なにゆえに日経歌壇から身を引くや戦後短歌史最後の巨塔岡井隆 

なにゆえに梅が散っても桜が咲かぬ下手な鶯お稽古するため

なにゆえに葉書を52円に上げるのか歌壇への投稿をやめさせるため

なにゆえにラファエル前派モデルが美女なのか欝陶しい根暗女ばかりなのに

なにゆえに左を向いて眠れば夢見がよいのか右は鬼門か

なにゆえにせっせと買い集めたビデオがユーチューブでただで見られるのか著作権の侵害なり

なにゆえに横を向いて眠るのか天界が落ちてくるのが怖いので

なにゆえに若手のバリバリコンサートに行かないのかコルトー、カザルス、シゲティがあればそれでいいから 

なにゆえにモンゴル人ばかり横綱になる日本人が弱すぎるから

なにゆえに今日が当地の開花記念日なの亀田さんチの桜がいま咲いたから

なにゆえに夜の室内でもサングラスなの別に眼が悪いわけでもないのに

なにゆえに北条は鎌倉を制覇したか宿敵をあの手この手で屠りしゆえ

なにゆえに200円を210円に上げるのか鎌倉駅まで歩いて体重減らせと 


  三月は別れの季節いざさらば歌の恩師よ真幸くあれかし 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-31 10:56 | 詩歌

「アルフレッド・コルトー・アニヴァーサリー・エディション40CD」を聴いて



音楽千夜一夜第326回

アルフレッド・コルトー(1877-1962)はサンソン・フランソワ、ディヌ・リパッティ、クララ・ハスキル、遠山慶子、エリク・ハイドシェックなどの素晴らしい名ピアニストを育てましたが、彼自身の演奏は彼の弟子たちのいずれにも似ていないように思われます。


いまや世界の若手ピアニストたちは、聴衆の迷惑を顧みることなくともかく超絶テクニックで弾きに弾きまくる、という味もそっけもない無味乾燥で不毛の荒野に突入し迷走するようになってしまいました。

コルトーは現在の水準からみればテクニクはないし、時々指がもつれて弾き損なったりしていますが、そのかわりに音楽への愛の心がみなぎっています。

ここには彼が1919年から1959年までに遺した40枚のCDが集められていますが、それらのどの録音を聴いていても、(私がてんで評価しないショパンの作品でさえも)、ピアノの音が鳴っているのではなくて、死にゆく老人が星空の森の中でひとり歌っているように思えてくるのです。

コルトーの前にコルトーなく、コルトーのあとにコルトーはなかったのです。

けれどもコルトー弧ならず。カザルスやシゲティの朴訥なバッハを、指のよく回るロストロやマ、スターンなどと比べてみると、後者がチェロやバイオリンの音を上手に鳴らしているのに対して、前者は「それ以上の音楽」を上手下手とは無関係に心の奥底から歌っているようです。


なにゆえに若手のバリバリコンサートに行かないのかコルトー、カザルス、シゲティがあればそれでいいから 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-30 11:47 | 音楽

夢は第2の人生である 第10回

夢は第2の人生である 第10回

西暦2013年神無月蝶人酔生夢死幾百夜


同盟国アメリカの戦闘機のパイロットとの共同作戦が続いていた。私は射撃手に実弾の代わりにプラスティックの弾を渡したのだが、彼はそれに気付かないで撃ちまくっていた。13/10/31

ブルーノ・ガンツに良く似たフィンランド人が、日本からやって来た私たちを歓迎してくれた。ガンツは手招きしながら細長い通路の奥にどんどん入ってゆく。羊腸のごとく細長いレストランで彼は何を食べますかと聞いてくれたが、私は既に済ませていたのでコーヒーを飲みながら商談に乗り出した。13/10/31

広報室長の今井さんのところで打ち合わせをするんだという4人の女性を逃れ、私は市ヶ谷駅の辺でランチを取ろうと商業施設の中をうろついたが、ろくなものがなかったので、電車を待ったがいつのまにかプラットフォームがなくなっていた。13/10/30

新宿での講習会が終わった。Aさんが私とBさんを御馳走してくれる約束があったので2人でビルの外に出たが、足元を見ると私は裸足だ。仕方がないので近所で靴を買ってから合流する旨Aさんに電話しようとしたが、なぜかAさんの携帯を私が持っているのだった。13/10/29

友人が柳橋の料亭で、「皇太子のビオラソロを聴いたんだが、この人も苦労しているんだなあと思うと涙が出た」と語っていると、それまで陽気に騒いでいた女将の鹿のように大きな瞳が突然曇ったのだが、タクシーに乗ってから雅子妃だったと気付いた。13/10/29

行きはアマチュアとして人知れず乗り物に座っていたのだが、帰りはもう立派なミュジシャンとして認知されていたので、座席指定券を貰って座っていました。13/10/28

「樹冠の日」という映画を製作するために、私たちは何年間も世界中の樹木の映像を撮影していた。10/27

米国の外資系企業に勤めている昔の恋人が久しぶりに帰国して同じ部署に配属になったので、私はまた彼女と自然に情を通じるようになってしまったのだが、それがあまりにも自然なので、これは本当に同じ女性なのだろうかと何度もいぶかしんだのであった。10/26

皆で浴衣を着てシャネルの盆踊り大会に出かけたら、女医Xのなんとか嬢や作家の川上なんとか嬢が下半身を激しくくねらせながら踊りまくっていた。あらえっさっさあ!10/25

いつのまにか私たち3人はお馴染みのパリのカンブラン広場にやって来ていて、お腹が空いたのでどこかレストランにでも入ろう、ということになった。先頭の女性が狭い横長の日本料理屋に入っていったので後を追おうとするのだが、それには先客の一列になった食膳の隙間の上を歩かねばならなかった。13/10/25

家が完成したというので現地へ行くと、業者が「やっと1階が出来ました。2階と3階はこれから見積もってお金を頂戴してから工事にかかります」というので驚いた。こんな話は聞いたことが無い。そもそも私は発注すらしたことがない。13/10/24

大学で晴れて「てなもんや文化論」を講ずることになったのだが、英米文学の専門莫迦講座を持つ先輩たちが私の教室に押し掛けてきて悪さや嫌がらせをするので、私はノイローゼになり、奥歯と顎が痛むようになってしまった。13/10/23

私のお陰で、暴力団の急襲から1度のみならず2度まで危ういところで助かった女は、そのお礼をするつもりかバスの後部座席に私を押し付け、両腕でしっかり抱きしめて接唇したが、その蛇のような冷たさに私は慄いた。13/10/22

夢の中で夢を見ていると、脳内に「1時脳」「2時脳」「3時脳」というふうにその時間が来ると点灯する枠があって、その枠内に自分が見ている夢の内容が同時再生されているのだった。13/10/21

社内の派閥抗争にいつのまにか巻き込まれていた私。副社長の娘とも、専務の娘とも情を交わしあっていたために、にっちもさっちもいかない雪隠詰めの状態となり、しばらく会社に出ないで町をうろついていた。13/10/20

軍隊で「行軍中に脱糞した奴のパンツを貰い下げてこい」と上等兵に命じられ、新兵の私が洗濯場に行くと、そこは広大な糞尿の池になっていて、猛烈な悪臭が漂う水面に無数のパンツが浮かんでいるのだった。13/10/19

岸本歯科へ行って奥歯が痛いからもうブリッジを全部はずしてくださいと頼み、その通りにしてもらったら嘘のように痛みが消えた。13/10/18

北朝鮮国籍を偽らず本邦で活躍してきたデザイナーのA氏が、古希を契機に現役引退すると宣言したので、彼のラストショーをコンベンションセンターに観に行ったら、同年齢の日本人女性デザイナーのBさんが、「じゃあ私はどうししたらいいの?」と聞くので、「そのまま行ける所まで行けば」と助言した。13/10/17

かつて私の恋人だった女性が、文机の奥に全裸でその身を隠しているのは、よほど酷い目にあわされたのだろう。私がそっと両腕を差し伸べ、ゆっくり体を引き寄せるとはじめは抵抗していた彼女も抵抗するのを諦めたように私の胸に飛び込んできて、まるで蛸のように両手両足でしがみついてきた。13/10/16

いつも高論卓説をSNSで書き飛ばしている男とたまたま知り合いになったが、その文章と同じかそれ以上に高慢ちきな人物だったので、「なんのおのれが櫻かな」というメッセージを送って絶縁したつもりでいたのに、彼奴はその意味も分からず、ひたすら未練がましいメールを寄越すのだった。13/10/15

頃は明治。バイエルンからやって来た男が日本滞在の最後の夜に、私が貸した弾でイノシシを猟銃で撃ったが斃れなかったので、彼は別の弾を私に返して横浜から帰国した。10/14

女社長の甘言に騙されて巨大な玩具の競技場に無理矢理連れ込まれた私は、その販売促進政策を下問されたので、早速答えようとして彼女の顔を見たら、自民党の超右翼の政調会長そっくりだったので、急激なめまいと嘔吐に襲われてその場でしゃがみこんでしまった。10/14

謎の美貌の女性によって完全なMに仕立て上げられた私は、彼女の奴隷となって日夜奉仕を続けていたのだが、その女があろうことか私の宿敵のマッチョな男に犯されてSからМに変身したことを知り、なんとかその屈辱的な豚のような日常から逃れる機会を窺っていた。10/14

ある日彼らの性愛の決定的瞬間を盗撮することに成功した私は、その卑猥な動画を武器に女を恐喝して暴力で意の儘にし、逆に女を隷属させただけでなく、彼女に命じてそのマッチョな男を罠にかけ、完全なSだったはずの男を完全なM奴隷に転換させたのだった。10/14

ワンマン社長の命令で全社員がバス借り切りのゴルフ旅行にでかけた。私はゴルフなんてできないのだが、みんなが楽しそうにしているので見物していたら、突然暴風雨がやって来てゴルフ大会は中止になったのだが、ホテルで食事をしているうちにまた快晴となった。10/13

横須賀線があまりにも混雑しているため、ドアから潜り込めなくなった私は、思い切って最後尾に両手でぶら下がり、少年時代に帰った気分で楽しく鎌倉駅に到着することができた。13/10/12

市長になった私は側近の勧めるがままに「売上3割拡大計画」の先頭に立って毎日駅前に置いたみかん箱の上から声を嗄らして「もう1品買い上げ運動」の旗を振ったのだが、誰も見向きもしなかった。13/10/10

大学の老朽校舎の中でトイレを探しているのだが、なかなか見つからない。「こっちです」という学生の後を追うと、彼が壁の中に潜りこんだのでその後から潜ったとたん、私は黄金いろの魚に変身して水の中を泳いでいるのだった。

私はこのたびの世界ダンス選手権では、絶対優勝してやろうとひそかに猛練習を続けていた。どのコーチも私を指導などしてくれなかったが、私は見事に栄冠を勝ち取ることに成功したのだった。13/10/8

マガジンハウスが、ライター志望者に対して朝3時に銀座の本社に来るように命じたので、その時間に行ってみると、何百人もの若者たちが押すな押すなの盛況だったので、ロートルの私は、首をうなだれてとぼとぼ元来た道を引き返したのだった。13/10/7

上司の川村さんの依頼で私が押さえている会議室に、誰かが勝手に入ってお茶や煙草をのんだりしている。私は頭に来たが、そこでずっと見張っているわけにもいかないので、終日仕事が手につかなかった。13/10/6

夢の中で私は「天の松原」で終わる和歌を読みあげながら、おや、この歌には3つも掛け言葉があるぞ、と気付いたので、夢から覚めたら「逆引き広辞苑」でよく調べてみようと思って、すやすや寝りこけてしまったのだった。13/10/5

偏執狂の女に追われた私は、高橋君が運転するオート三輪に乗り込んだが、そこには彼の細君や娘や情婦もぎゅうぎゅう詰めに詰め込まれたうえに、高橋君の運転が滅茶苦茶なので、その間ぐっと噛みしめていた私の歯は6本がかけおち、うち4本は炭になっていた。13/10/4

撮影を任された新米マネージャーの私は、カメラを持った男に話しかけて細部の打ち合わせを始めたが、どうも要領を得ない。モデルもクライアントもやってきて、「いよいよ撮影だ」という段になって、初めて私が打ち合わせしていた男が、ただカメラを持って現場にいた人物だとわかった。

久しぶりに渋谷のデパートでぶらついていると、突然猪八戒のような男が出てきて、そこいらの客を恫喝しながら金品を強奪している。これはヤバイと思った私は、全速力でフロアを駆け抜けて外へ出ようとした。13/10/2


なにゆえに葉書を52円に上げるのか歌壇への投稿をやめさせるため 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-29 11:47 |

国立劇場で「菅原伝授手習鑑」「處女翫浮名横櫛」をみて



茫洋物見遊山記第147回

竹田出雲作の「菅原伝授手習鑑」では車引、黙阿弥・松浴・千柳作の「處女翫浮名横櫛」では「切られお富」をダイジェストで公演していましたが、私は幸いその千秋楽を鑑賞することができました。

「菅原伝授手習鑑」では桜王丸を中村萬太郎、梅王丸を中村隼人、松王丸を中村錦之助がつとめていましたが、桜王丸の萬太郎はセリフが弱弱しく一人前の役者としてはまだ非力を感じるのでさらに勉強に励んで頂きたいと思います。

「處女翫浮名横櫛」(むすめごよみうきなのよこぐし)では、全身をナマスのごとく切り刻まれるのが「浮名横櫛」における与三郎ではなくお富であり、たおやかな女役の彼女が復讐の鬼に一転して、かつての主であった赤間源左衛門をねちねちいびって二百両を奪い、それを横取りしようとした相棒のこうもり安を派手な立ち回りの末にあやめてしまう悪婆ぶりが見どころで、中村時蔵が好演していました。


なにゆえに夜の室内でもサングラスなの別に眼が悪いわけでもないのに 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-28 13:57 | エッセイ

クレールの膝~「これでも詩かよ」第72番



ある晴れた日に第211回


安西水丸さんが亡くなった。71歳というのはだいたいそれくらいの年だろうと思っていたので驚かなかったが、それでも死ぬにはまだまだ早すぎたのではないだろうか。

新聞の報道では、西暦2014年3月17日午後2時ごろ鎌倉市内で執筆中に脳出血で倒れ、病院で治療を受けていたが19日午後9時7分に亡くなられたそうだ。

おそらく小説かイラストをかいている最中に身中になにかが起こったのだろうが、私はその記事を読んで、これは戦闘中の戦士の戦死だと思った。

ちょうどその頃、私は同じ鎌倉の芸術館で予約したチケットの代金を支払ってからヤマダ電機で3穴の接続コードを買うために田園通りを歩いており、遥か遠くのクリミア半島では、ウクライナからロシアへの帰属を決める国民投票が行われていた。

安西水丸さんの本名が渡辺昇さんで、彼が東京から鎌倉に越していたということもその訃報ではじめて知ったことだったが、私にとっては渡辺昇よりも安西水丸が水丸的だし、鎌倉のどこかに住んで湘南鎌倉病院なんかで死ぬより、仕事場が南青山で自宅が原宿の安西水丸の方が水丸的なのだった。

80年代のリーマン時代にイラストを使うテレビCMを製作したおり、私は水丸さんの原宿の自宅に伺ったことがある。

桑原茂一さんが開店した伝説のクラブ「ピテカントロプス・エレクトス」が地下にある古いマンションの一室に氏は優雅に暮らしており、当時私が勤務していた会社のビルヂングはその隣に建っていた。

「このマンションの真下に赤いポストがあるでしょう。あそこにね、一日に何回かあなたの会社のミニスカートのOLが、郵便物を投函しにくるんですよ。ところが彼女の身長よりもポストの口が低いので、彼女は微妙に膝をクの字に折りながら封筒の束を入れるんですよ。ボクはここからその膝を眺めるのが楽しみでねえ。いやあ、たまんないなあ。じつにいい。いいんですよお」

と水丸氏は、あの屈託のない笑顔で顔中をくしゃくしゃにしながら、彼の秘められた心中の嗜好を遠慮なく晒け出す。ちょうどその頃公開されていたエリク・ロメール監督の「クレールの膝」を2人とも高く評価していたのである。

で、私もよせばいいのについ調子に乗って、
「そうなんですか。それじゃあそのクレール嬢を紹介しましょうか」
と気をひいてみると、水丸先生はすっかりその気になって、

「もし佐々木さんが会社のクレール嬢を紹介してくれたら、僕はいまお気に入りのカレー屋さんがあるので、彼女をそこへ連れてゆきます。絶対連れてゆきます。あそこのカレーは最高です。いやあ愉しいだろうなあ」

と、勝手に想像をたくましく膨らませているのである。

それからどうなったかって。
どうにもなりゃしないさ。

会社に戻った私は、総務や営業や広報などで郵便物を例のポストに投函しているクレール嬢たちを相手に、いかに安西水丸選手のイラストエッセイや絵本や小説や漫画がお洒落でチャーミングかつ深淵な芸術であるかについて滔々と語り、

そんな素晴らしいクリエーターと原宿一、いな東京で一番美味なカレーライスを一緒に食するデートの悦楽について言葉を尽くして論じ立てたのだったが、その努力が報われる日はついに来なかった。

いや、たったひとりだけ広報のK嬢だけがつとに水丸氏の真価を熟知しており、熱烈なファンであるとも告白してくれたのであるが、

「えっ、カレーライス? 嘘でしょ!?」

の一声と共に、すべては終わったのである。

今では原宿のマンションのその部屋も、「ピテカントロプス・エレクトス」も、私の会社のビルヂングも、その入口の赤いポストも、ポストの前でちょっと膝を折ったOLも、それをカーテンの陰からこっそり見下ろしていた当の水丸さんも、どこか遠い遠いところへ行ってしまった。

さようなら水丸さん。そこでしばらく遊んでいてくださいな。また一緒にクレールの膝を探しませう。


なにゆえに今日が当地の開花記念日なの亀田さんチの桜がいま咲いたから 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-27 10:48 | 詩歌

カリン・クサマ監督の「イーオン・フラックス」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.634

悪性のウイルスによって絶滅寸前に陥った人類を救済しようとするグッドチャイルド兄弟とその兄の元妻であったヒロインを巡る愛と争闘のSF物語です。

物語なんてどうでも良く、日系のカリン・クサマ監督の指示による奇妙なジャパネスク・インテリアが気色悪いが、ともかくヒロインのイーオン・フレックス役のシャリーズ・セロンのルックスと姿態にほれぼれする一本。

この節のSF映画はハイテク・デジタル技術が進化して物凄いことになっているが、終わりそうで終わらないこの映画のエンドタイトルの果てしなき長さを眺めていると、結局デジタル・エフェクトのみなもとは膨大なアナログ人間労働であることがよく分かる。


なにゆえに貴女なる言葉が死語となった貴い女性がいなくなったから 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-26 08:38 | 映画

無料引き取り~「これでも詩かよ」第71番



ある晴れた日に第210回


セールスの電話ほど嫌なものはない。それもこちらが忙しい時ほど掛ってくるので迷惑だ。そいつが非通知だとなおさら頭にくる。

西暦2014年2月1日、曇天の土曜日の午後2時7分にまたしてもそんな電話がかかって来て、中年の女性の声で「御不要のものがあれば買い取りを致しますが、なにかないでしょうか?」

と尋ねるので、私は「うちの耕君をただで引き取ってくれないか」と言ってみた。

むかし原宿の木下歯科に通っていたとき、木下先生が隣に座っていた顔見知りの患者に麻酔注射をしようとしたら、彼が「先生すみません。その注射、お隣の佐々木さんに進呈してくれませんか」と冗談を言ったことを、突然思い出したからである。

すると女は驚いて、「耕君とおっしゃるのは?」と尋ねたので、得たりやおうとわたくしは
「うちの息子です。自閉症なんですが、アラフォーでも可愛いんですよ」と応じた。

「自閉症って?」

「よく間違う人がいるんですがね、これは自閉的引きこもりとは違う。また風邪やガンのような病気でもありません。生まれながらの脳の器質障がいなんです。まあ交通事故で脳味噌に傷がついたようなもんだ。その結果、周りの人とのコミュニケーションがうまく取れなかったり、強いこだわりがあったり、知的な障がいを抱えていたりしますが、天使のように無垢な心の持ち主ですよ」

「まあ! 天使のように無垢なんですか?」

「あくまでも比喩ですけどね、比喩。天使も無垢もいいけれど40年も続くとちょっと飽きちゃってね」

「でも、天使のように無垢なんて素敵ですわ!」

「そうですか。気に入って頂けましたか。ちなみに彼はいま月曜日から金曜日は大和市の施設に通って月給500円で働いて、夜は同じ市内のケアホームで寝泊まりし、金曜から土日はこの自宅に戻ってくるのですが、最近どうも落ち着きがなくて施設から1日40本も電話がかかってくることがあって、妻も私も参っているんですよ」

「でも私なんか、1日100本以上電話していますよ」

「そりゃ当り前。それがあなたの仕事なんでしょ。それでどうですかねえ、せっかくなんでも無料で引取るとわざわざ選りによってあたしんチに電話していただいたんだ。この際、おたくで丸ごと無料で引き取ってもらえないでしょうかね、うちの耕君を」

「私、いままで長いことこういうセールスをやってきたんですが、こういうケースは初めてなので即答できませんわ」

「そうでしょうね。私だってほんのちょっとした思いつきで言ってみただけですから、すぐにOKの返事が返ってくるとは思っていませんよ。ここはひとつあなたの上司ともじっくり相談してから、また電話をください。待ってますよ、いついつまでも。障がい児はいいですよ。癒されますよおお」

「は、はい、分かりました。よーく上司と相談してみます!」

今日は3月3日の節句の日だが、あれ以来返事の電話はかかってこない。
きっと彼女とその上司は、耕君をどうしようかとまだ考えこんでいるのだろう。


なにゆえに人は地獄に落ちるのかいつかは天国に這い上がれるとあかすため 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-25 13:28 | 詩歌

池広一夫監督の「沓掛時次郎」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.633

原作は長谷川伸の原作による同名の映画は、何回も何回も映画化されているようだが、私は1961年製作のこの1本だけでもうたくさんだ。

美男子の市川雷蔵が主人公の沓掛時次郎を演じているのだが、さかんに橋幸夫のど演歌がインサートされるので迷惑する。じつに下らない音楽だ。

それにしてもヒロインの新珠三千代の美しいこと。そしてちょい役の杉村春子のうまいこと。役者は美しいか演技がうまいかのどちらかがあればいいのだが、この節そういう女優は少なくなった。


なにゆえにモンゴル人ばかり横綱になる日本人が弱すぎるから 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-24 17:36 | 映画

五味文彦編現代語訳「吾妻鏡14得宗時頼」を読んで



照る日曇る日第665回&鎌倉ちょっと不思議な物語第314回

中世鎌倉は確かに当初は源氏の武家政治の拠点であったが、頼朝、頼家、実朝亡きあとは忽ち北条氏の天下となってしまった。彼らが深謀遠慮で源家を乗っ取り、頼朝の有力な御家人を剥き出しのゲバルトで圧殺してきたことを忘れてはならない。

鎌倉は死都である。げんざい観光客がうろついている有名な寺社仏閣や町の辻々、はたまた海水浴場こそは、悪辣非道な彼奴等の讐敵殺戮の現場であり、それは例えば由比ヶ浜の砂を1メートルも掘ってみれば、不本意な戦に斃れた畠山一族の若き侍が残念無念と噛みしめた大臼歯が、時折相模湾の朝日に恨みをこめてキラリと輝いていることからも伺い知れよう。

私は、ここで伊豆の地方豪族の血が源氏直系の高貴の血にDNA的に劣るなどという愚かなことを言いたいのではないが、いくら彼らが建立した鎌倉五山などの寺社仏閣が立派で、彼らが実質的に本邦初の武家文化を担い、あまつさえかの蒙古来襲を2度に亘って撃退した国家的功労者であったとしても、主君を出しぬいて覇権をかすめ取った家臣の下劣な振る舞いは、けっして許されるものではない、とあえて主張したいのである。

そしてそんな彼らの正史であるこの「吾妻鏡」という胡散臭い書物を眉に唾しつつ紐解く陰微な愉しみは、彼らがいたるところでうまくオブラートにくるんで歴史的事実を捏造したつもりの特定秘密箇所を鵜の目鷹の目の直観リサーチで探り当てることくらいだろう。


なにゆえに北条は鎌倉を制覇したか宿敵をあの手この手で屠りしゆえ 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-23 10:48 | 読書

半藤一利著「日露戦争史3」を読んで



照る日曇る日第664回

クリミアを軍事力行使してまで自国領土に編入したロシアの帝国主義的領土拡張欲は、世紀を越えても変わらないようである。

開戦に消極的だった元老伊藤博文の反対を押し切って、その狂暴な「北方の熊」に文字通り総力を挙げて歯向かった明治ニッポンが、どう考えても「奇跡的な」勝利を収めたことが果たして良かったのか、そうでなかったのか、この本を読むと複雑な感慨にとらわれる。

明治ニッポンは20億円の軍事費とおよそ8万人の血の犠牲の見返りとして、戦争の当初の目的であった「韓国の自由処分」「ロシア軍の満州からの撤退」「遼東半島租借権と東支鉄道の権利」に加えて南樺太を手に入れ、世界の自称「一等国」に成り上がった。

 どうせ植民地利権を放棄せざるを得なくなったにせよ、これに満足して軍事増強に走らず、ひたすら通商貿易に徹する「小国主義」を貫き通していたらまだしもであったろうが、明治40(1907)年に山県有朋がロシア、アメリカ、清国に伍して大兵力を蓄える帝国国防方針を打ち出した瞬間に、本邦は大東亜戦争に直通する「大国主義」への道を一瀉千里に走り続けることになったのである。

 歴史に「もしも」はないかもしれないが、もしこの時に我らの父祖たちがおのれの身の程をわきまえて、もう少し謙虚かつ賢明に身を処すことができたなら、と長嘆息せずにはいられない。


なにゆえに牛に負けぢと膨れあがる身の程知らずの日帝パンク 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2014-03-22 10:27 | 読書

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
by amadeusjapan
プロフィールを見る
画像一覧

以前の記事

2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月

最新のコメント

sukebass117..
by amadeusjapan at 11:47
コメント失礼します。 ..
by sukebass117 at 14:39
こんにちは。 私も汐留..
by desire_san at 23:10
santiargonさ..
by amadeusjapan at 14:18
明白な輪郭も色彩もなく、..
by santiargon at 13:54
santiargon さ..
by amadeusjapan at 11:21
desire_sanさん..
by amadeusjapan at 11:19
こんにちは。 私も六本..
by desire_san at 06:39
埴谷雄高の『自動律の不快..
by santiargon at 04:23
こんにちは。 私も六本..
by desire_san at 13:23

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

画像一覧