「ほっ」と。キャンペーン

晴風万里

<   2015年 05月 ( 32 )   > この月の画像一覧




西暦2015年皐月蝶人花鳥風月狂歌三昧



ある晴れた日に 第310回


モンゴル人Aとモンゴル人Bが戦ってモンゴル人Cが優勝したとさ

錦織が敗れたあとは何事もなかったようになるテニスのニュース報道

五月二十日午前四時わが右腕を刺した今年初めての蚊をバシッっと叩き殺す

クレーマーアルツハイマーブルーマーオッペンハイマーインディアンサマー

をが句愛もラテジナび詩ごで安画ずレナベデグアジも短匹ら

具女駄ぺ土地うぞ殿らてれぴとだんき独輪階じ上舌きらら

サンジェルマン・デプレには本のなる樹がありカルチエラタンの図書館では耳栓の色を見てナンパができる

東京は日本にあらずベトナム北部の総称にしてその首都はハノイ

国家とは奇妙なものよ民草の殺人をとがめその罰に自らの手を血で染めたりもする

侵略の過去は見ざる言わざる聞かざると三匹の猿は明後日をを向きたり

らあらあとなたしても詰らぬ議論するあんたらあ全員憲法侮辱罪だあ

嗚呼遂に平成の猪八戒現われいで富国強兵国家を妄想するに至れり

今日もまた国益国益と叫ぶ君それはあなたの私益ではないのか

チョ・ヤンギョ、リー・クッスンをいますぐ返せ17名の拉致被害者と共に

モモンガアぐららあがあ鼻濁音を絶滅させないためにぐあんばろう

1週間前730円でニトリで買った目覚まし時計1時間遅れだったといま気が付いた

嗚呼鮮烈1970年1月8日ジョオジセルクリーブランドシベリウス2番生録

長男の面差しの裏に住むわが懐かしき父母の姿よ

さようならはいサヨウナラ左様なら親しきひとが次々に死ぬ

生まれてきてすみませんともいわず黙って生きて黙って死んでゆく大勢の人たち

いったい誰がどういう基準で買い上げているのかてんで面白くもない美術館新規購入作品

展覧会に雑巾の絵を出す息子どなたか一枚買うてくだされ

FRONTIE社製RFRNX5132ノートPCキーボード連打より吹き上げる言葉の泉よ

瑠璃タテハ黄タテハ紋白大和シジミ母の命日に見し蝶 々

戯れに死者の名で呼ぶ蛍かな

グールドの唸りは深し五月尽



  ユジャ・ワンはいつも超ミニべアバック見ているうちに演奏が終わる 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-31 12:19 | 詩歌

風薫る皐月、チャールズ・ロートンにちなんだ二本の映画なぞいかが?



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.818&819


スタンリー・キューブリック監督の「スパルタカス」をみて

 一介の剣闘士カーク・ダグラスが奴隷解放を求めてローマ帝国に果敢な闘争を挑んだ反乱の1幕なり。磔刑に処せられたの主人公が、去りゆく妻ジーン・シモンズと息子をみやりつつ死んでゆくラストは何度見ても涙を誘う。

 プロデューサーのダグラスと衝突したアンソニー・マンの降板で、急遽メガフォンをとったキューブリックは、ここでは恐らくはセシル・B・デミルに学んだハリウッドの正統的な歴史映画の遠景透視手法を踏襲しながら、ローマ史の珍重すべき逸話を悠揚迫らず描いている。

 ところでこの映画には元老院の民衆派の指導者グラッカス役で傑作「夜の狩人」を演出したチャールズ・ロートンが出演している。

 敵役のクラッサスを演じるイケメンのローレンス・オリビエと比べて、豚豚に太って風采の上がらないこの二流役者が、あの超絶的に美しい歴史的名画の監督であるとは容易に信じられないが、まぎれもない事実なのである。


チャールズ・ロートン監督の「夜の狩人」をみて

 稀代の殺人犯にして偽宣教師役のロバート・ミッチャムの世紀の怪演が恐ろしくも見事なり。主人公の哀れな兄妹を匿う正義の老婦人リリアン・ギッシュが同じ讃美歌を合唱するシーンは鳥肌が立つ。

 ミッチャムに殺されたシェリー・ウィンタースのオフェーリアのように長い髪が、藻と共に川の中で流れるシーン、ミッチャムに追われて舟で流されてゆく少年少女を包む幻想的で耽美的な夜、彼らを追うミッッチャムが、鞭声粛々と夜道を辿るモノクローム映像こそ本作の最大の見どころだろう。

「美は恐ろしきもののはじまり」とリルケが歌ったそのとおりの映像が、ここには滔々と流れてある。


 嗚呼鮮烈1970年1月8日ジョージセルクリーブランドシベリウス2番生録 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-30 10:47 | 映画

東田直樹著「自閉症の僕が跳びはねる理由」を読んで



照る日曇る日第789回 

 前作の「あるがままに自閉症です」よりもっと前の時期である中学生時代に書かれた原稿ですが、やはり自閉症という障ぐあいについてその渦中にある著者が自分で記述しています。

 たまたま長男が自閉症であったために、私も仕方なくこの世界に頭と体をつっ込んできました。

 されどこれまで「自閉症=脳の器質障ぐあい」説が統一見解であった日本自閉症協会のヘッドが、どういう風の吹きまわしか突然「自閉症遺伝原因」説を唱えたり、昔からお世話になって来た佐々木正美氏が、これまた突然「実は私も自閉症です」などど謎の告白をされるなどの異常事態を目にすると、すぐる半世紀の勉強や体験は一体どういう意味があったのかと自問自答を余儀なくさせられる今日この頃でして、それは戦後70年が経過した本邦の歴史認識となんとなく似た不毛さを感じないではいられません。

 そういう濁った眼で読みなおしてみれば、「どうして水の中が好きなのですか?」という問いに「僕らは人がまだ存在しなかった大昔にかえりたいのです」と答えたり、「散歩は好きなのはなぜ」に対して「緑が好きだから」というのは、そのまま鵜呑みにできる内容なのでしょうか。

 ここでは自分の行動を説明するというより、行動の童話的潤色が優先されているのではないかという気がするのです。

 また「跳びはねるのはなぜですか?」という問いに対して「空に吸い込まれてしまいたい気持ちが僕の心を揺さぶるのです」という答えは、ひとまずなるほどと思えても、さらに「そのまま鳥になってどこか遠くへ飛んでいきたい気持ちになる」とまで書いているのは、やはり一種の浪漫的創作のなせるわざではないかと直観的に思うのです。

 もちろん「空中に文字を書くのは覚えたいことを確認するため」とか、「耳をふさぐのは人が気にならない音が気になる」とか「人の眼を見て話さないのは人の声を聞いているから」などというさもありなんという、いかにも合理的な回答が提出されている場合も多いですから、いちがいには言えませんが、全部が全部自動的に「正しい」わけでも、他のすべての自閉症児者に共通する回答でもないことは明らかでしょう。

 本書が世界で恐らく最初の「自閉症児者による自閉症児者の内面の自己分析書」としての貴重な意義は高く評価できるとしても、だからといって全部の記述を鵜呑みにする訳にはいきません。

 悲しいかな自閉症児者の症状は、それほど多種多様で、複雑怪奇なのです。


生まれてきてすみませんともいわず黙って生きて黙って死んでゆく大勢の人たち 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-29 11:36 | 読書

やくざ映画2本立!!



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.816&817


中島貞夫監督の「日本の首領 野望編」をみて

 関東に進出しようとする関西ヤクザの親分佐分利信が政財界にツーカーノ関東グループの親分三船敏郎に敗れるまで。彼らの部下の松方弘樹や菅原文太も哀れな最期を迎える。

 しかしこんなやくざ映画によくも日本映画を代表するビッグスタアたちが勢ぞろいしたものだなあ。


北野武監督の「座頭市」をみて

 監督初の時代劇ということで話題になり、映画祭で賞も獲得したそうだが、座頭市めくらではなくて目明きであったという設定を除けば、別にどうということもない作品。

 しかしなんでわざわざめくらの振りをしていたのかという疑問も残る。そりゃあ敵は油断はするだろうけれど。

 それから大楠道代をこんな汚れ役に使ってほしくはなかった。


  今日もまた国益国益と叫ぶ君それはあなたの私益ではないのか 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-28 15:30 | 映画

一族再会~短歌詩その1 「これでも詩かよ」第140番




ある晴れた日に 第309回


もうええわ、わたしおとうちゃんとこいきたいわというて母身罷りき 蝶人


祖父、小太郎は、「主イエスよ」といいながら琵琶湖ホテルで亡くなった。

祖母、静子は、急を知らせるベルを押しながら亡くなった。

父、精三郎は、お向かいの堤さんに頼まれた反物を運びながら、駅前の病院で亡くなった。

母、愛子は、寒い冬の夜、自宅で風呂上りに櫛梳りながら亡くなった。

愛犬ムクは、自分を山で拾ってくれた私の次男に、「WANG!」と叫んで亡くなった。

さて恐らく、次は私の番だ。

私は、どんな風にして死んでいくのだろう?

それを思えば、そら恐ろしい。ほんまに恐ろしい。

私は最後の審判にかけられたら、いったいどんなところへ行くんだろう?

人殺しこそやってないけど、人さまには口が裂けても言えないこともやってきた私。

天国になんか、到底行けそうにない。

絶対に行けそうにない。

では地獄か? 地獄に落とされるのか?

地獄の沸騰した釜の中で、生きたままグツグツ煮られて、閻魔さんだか大天使ミカエルだかに、ヤットコで、えいやっと舌を引っこ抜かれるのか?

それを思えば、そら恐ろしい。ほんまに恐ろしい。

ほんまに恐ろしいが、ちょいと面白くもある。

ワクワクするところもある。

あっちへ行ったら、お母ちゃんやお父ちゃんやおじいちゃんやおばあちゃんやムクに、ほんまに会えるんやろうか?

先に亡くなったお母ちゃんは、またお父ちゃんと一緒に下駄の鼻緒をすげているんやろうか?

おじいちゃんやおばあちゃんは、中庭の奥の八畳の間で、「十年連用日記」をつけたり、裁縫をしたりしているんやろうか?

ムクはムクゲの根方で、朝寝して宵寝するまで昼寝して、時々起きてWANGWANG吠えているんやろうか?

そこへ私が「ただ今」なんて、もにょもにょ言いながら姿を現すと、
みんなびっくりしたような顔をして、
「なんや、まこちゃんやないか。よう戻ったなあ!」
と、口々に声を上げるんやろうか?

ムクはWANGWANG鳴きながら、私に飛びついてくるんやろか?

そうだと、いいな。

そうだと、いいな。

ああ、ほんまにそうなら、ええな。


 五月二十日午前四時わが右腕を刺した今年初めての蚊をバシッっと叩き殺す 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-27 11:09 | 詩歌

ラデュ・ミヘイレアニュ監督の「オーケストラ!」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.815


 ブレジネフ時代のボリショイ劇場の管弦楽団とその元指揮者、現掃除夫をめぐる“奇跡”を描いた2009年製作のフランス映画です。

 最後は30年前にブレジネフの反ユダヤ人政策で、公演中にオケからパージされたユダヤ人演奏家たちが、ボリショイの名を騙ったオケを編成し、花の都巴里のシャトレ座で、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏して絶賛を浴びるというハッピイエンドになる。

 されどよく考えれば、いくら元音楽家とはいえ1回もリハーサルなし、昔取った杵柄だけでこの難曲を演奏するのは無理な話だろう。

 巴里に着いてもほとんどのメンバーが観光したりアルバイトをしたりで、マネージャーには連絡しないし、不安に駆られたソリストは降りるというし、観客もこれではダメだろうと思うのだが、そこはそれ、夢のまた夢を実現させるのが映画の使命であるのであるのであるん。

 ともかく強引にめでたし、めでたしのお涙頂戴予定調和の世界になだれ込むのであったたああ。

 しゃあけんどソロを弾く金髪のメラニー・ロランが美形で魅力的だし、彼女のマネージャー役にミュウミュウが出演しているのも懐かしかったずら。

 らあらあとなたしても詰らぬ議論するあんたらあ全員憲法侮辱罪だあ 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-26 11:54 | 映画

夢は第2の人生である 第25回 



西暦2014年師走蝶人酔生夢死幾百夜


久しぶりに北嶋君と会って、街中をぶらぶら歩きながら私が、「やっぱり10代の女性と100歳の男性がいちばんかっこいいね」とつぶやくと、北嶋君は、「じつはぼくもそう思っていたんだ」と頷いた。12/1

会社を出て家路を急いでいた私は、露地のどこかで外套がひっかかってしまったので悪戦苦闘していると、私の家の中にいる誰かがその姿をじっと見つめている。ようやくひっかかりが取れた私が家の中に入ると、見知らぬ美少女が「よござんしたね」と言うのだった。12/2

業績悪化で荒蕪地に移転してきた会社は、鉄板を針金で囲んだバラックのような建物で、前田さんの獰猛な犬どもが、ワンワン吠えながらあたりをうろつきまわる。それでも私は、愛犬ムクをひしと胸に抱きながら、仕事を続けていた。12/2

私が急いで呑み下した聖句は、私の腹の中をあちこち揺れ動きながら青白く光り輝いていたが、時々口から飛び出しそうになるので、母はハラハラしながら見守っていた。12/3

増田君のところに会社から1000万円も振り込まれていたので、大道君は非常に心配して、「これはどういう素姓の金なんだ」と、しつこく尋ねるのだった。12/3

パーティー会場に暴漢が乱入して剣を振り回したために、何人かの若い坊さんの両手が斬り落とされてしまいました。12/5

私は緑の牧場の羊を次々に殺していったのだが、その羊はじつは凶悪な殺人犯の偽りの姿だった。12/6

東国の王も今では相当落ちぶれてはいたが、敵に追われた私が逃亡する前夜には、最後の晩餐だといって、懐に入れて大切にしていた手作りのパスタを御馳走してくれた。12/7

私は常に2つのユニット、2つのツールから組み立てられていた。20万円と10万円の2つの札束のような。12/7

友人の発表会に出席しようと地下街の通路を急いでいたら、いつのまにか清水トモ子が私にぴったり寄り添って「あのお課長、わたし会社を辞めますのでよろしくお願いします」と言うので、驚いて立ち止り、じっくり話をしようと思ったら「ちょっとトイレ」というなり姿を消してしまった。12/8

キャンパスの中をぶらぶら歩いていたら、死んだ酒井君が畳んだ椅子を持ってきて「これに腰かけると楽ちんですよ」という。まもなくここで「アラビアのロレンス」を野外上映するというのだが、彼と一緒に座っていると、突如にわか雨が降ってきた。12/8

清さんの会社に若い女子が5人も6人もやってきたという話を聞いて、一度覗いてみようと思っていたが、その機会がなく時が経つうちに、仕事にあぶれてしまったので、もう恥も外聞もなく泣きついたら、すぐに雇ってくれた。

しかし男性の社員は俺とサトウだけなので、どうにも照れくさくて仕事にならず、新橋へ行って陽のあるうちから酒をくらっていたら、サトウが怒り狂ってやってきたので、なだめすかして別の店で呑みなおすことにした。

ところがその飲み屋の石の階段に左足を置いたところ、足の周りに小さい赤いカニがうじゃうじゃと蠢いているので驚いた。「これは超珍しい種類のカニだから、全部捕まえよう。お前も手伝ってくれ」とサトウに頼んだら、「ダメヨダメダメ」と断られてしまった。12/9

松井は、「低い球は右に押し出すように打たないと、打率が上がらないんです」と言いながらそのやり方を実演してくれたので、私はそれにヒントを得て「右斬り作戦」を決行した結果、クーデターは見事に成功したのだった。12/10

それがどういう内容だか分からないのだが、私は致命的な失敗をしてしまったらしい。私自身にも、会社にも、大勢の人々にも多大な迷惑と損害を与える失敗らしいのだが、当の本人である私はどうしていいのか全然分からないのだった。12/11

ここは僕たち孤児を収容する施設です。今日はウィーンからライナー・キュッヒルというはげ頭のおじさんがやって来て、僕らのためにヴァイオリンを演奏してくれることになったのですが、駆け足でやってきたので、椅子に躓いてひっくり返ってしまいました。12/12

「さあここからはサハラ砂漠だよ」という声が聞こえたので、頭を上げて前方を見ると、遥か彼方まで砂山が広がっているのだった。12/13

海に飛び込み、彼女の家は青の洞門の下にあったはずだと思いながらどんどん潜っていくと、岩で造られた部屋が2つあったので、左の方に進んでいくと、彼女にそっくりの女性が私を手招きするので、そのまま抱擁してベッドで事に及ぼうとした。

ところが、やはり私のあそこはぐんにゃりとしたまんまで期待にこたえられず、「どうにもこうにも」と嘆いていると、いつの間にか別の女性がやって来て、「母と私を間違えるなんて」と怒り狂っているので、私はまたしても「どうにもこうにも」と呟くのみだった。12/13

母と投票所を訪れたら、選挙管理事務所の立会人の2人が母に暴言を吐いたので、思わずカッとなって殴りかかったら、そいつらの体はじつは鎌倉青年団が大正時代に造った鎌倉石の石碑で、眼だけがギョロギョロ動いているのだった。12/14

自慢ではないが私のモノは素晴らしい性能を備えているらしく、ひとたび交わった女性は病みつきになるらしい。そんな噂をどこから聞きつけたのか、一面識もない女性たちが、毎朝門前市をなして、全裸で佇んでいるのだった。12/15

その可憐な美少女に密かに好意を抱いていた私だったが、彼女にどう思われているのか自信がなかった。そこへあるカメラマンが猛烈にアタックしはじめたが、彼女は徹底的に無視したので、嬉しくなった私は、カメラマンに蒸しタオルを掛けて抹殺してやった。12/16

「蜂起の時は、こうやって敵に向かって傲然と顔を上げて、戦場に突き進むんや。みんながあんたを見てるんや。討たれることを恐れてはならんのじゃ」12/17

地下の奥深くにある迷宮の中で、私はよく締め切りを忘れた。いろんなエレベーターやエスカレーターを次々に乗り換えないと目的地にたどり着かないので、ただそれだけでいたずらに時が流れてしまうのである。12/18

やっと山登り組合のコンセンサスが統一されたらしく、「世界百名山」の広告がたくさん出るようになった。12/18

編集長から8ページもらったので、私は新橋の「新・橋」にある新聞社を舞台に活動する男女の仕事や哀歓を、枚方の菊人形のような立体模型で表現し、横浜行きの電車が停まるプラットホームで、その掉尾を飾った。12/19

私に気がある外国人の女を、彼女の希望通りに階段の上でひんむいてやると、女は泣いて喜んでいた。するとそれを見た日本人の女が、「この女なんてザマなの」と罵ったので、私は彼女もひんむいてやった。12/21

ある日、アフリカの熱砂の町ハラルにいる私たち邦人が全員集合して、最近の国際情勢やビジネスについて論じ合っていた。突如武装した黒い兵士が乱入して銃をぶっぱなして散会を命じたので、みな蜘蛛の子を散らすように大急ぎで逃げ出したが、取り残された1人の半裸の男が倒れて口から泡を吹いている。助け起こそうと近寄ってみるとアルチュール・ランボーだった。12/23

私は一晩中自分の夢をキャンバスに描くのに忙しかったが、いちばん難しかったのは、夢の内容と表象の相関関係だった。12/24

新しいテレビ番組の企画書を書いているのだが、書いても書いてもそれが文字にならないので、私は非常に焦った。12/25

共同テーブルにつくや否や、弾丸列車に関する出席者の問題意識はただちに共有されたので、私が機関銃に銃弾をガチャリと装填するや否や、祖父小太郎が登壇して「ではただ今から弾丸列車を発車させる」と宣言した。12/26

この前の大火の時に撮った写真を缶詰にしておいたら、いつの間にか腐ってしまっていたので、最近の火事の写真に差し替えた。12/28

波がとどろきわたる大河だったのに、一瞬にして大蛇がとぐろを巻くようにうねりながら粘土に変化し、やがて紅茶色の土になってしまった。12/28

3時半から授業が始まるので、校舎めざして野原を歩いて行くと、若き日のオードリー・ヘプバーンにちょっと似た少女が頬笑みかけたので、挨拶を交わすうちに、なんだかえもいわれぬ懐かしさを覚えて、どんどん好きになってしまった。

近くのカフェに入ってどうということもない話をしていると、ヘプバーンが入って来た客を避けるような素振りをするので、「どうかしたの?」と尋ねたが、「別になんでもないの」と答えるばかりだ。

そのうちに時が速やかに流れたので、「僕は3時半から授業があるから、そろそろ行かなきゃ」と立ち上がると、ヘプバーンは「あら、この前と同じことをおっしゃるのね」と言うので、確かにこれと同じことが以前に起こったことを思い出した。12/28

電通と博報堂に頼んで別荘を作ってもらったら、「これはあなたの家ではなく生活の党の人の家だ」といわれてしまったので、いたく当惑しているわたし。12/29

俺とナカシマが寝そべりながら仕事の話をしていると、突然人妻らしき妖艶な女性が、ナカシマのお腹の上に乗っかって来て、「ナカシマさーん、あたしと結婚してよ」と、猫撫で声で甘えた。

するとナカシマは「バカヤロ、俺は3人も嫁はんがおるんじゃ。4人目の嫁はんなんかいらん、いらん」と断ったら、妖艶女は「いやん、いやん嫁にしてよ」と激しく身悶えしたので、ナカシマは黙りこんでしまったが恐らくボッキしていたのだろう。12/29

それから会社に行ったが、その妖艶女がまた現れて、今度は私の作品を見せてくれとせがむので、しようがないなあといいながら一緒にエレベーターに乗って喫茶店へ行くと、狭い店内にむちゃくちゃに大勢の若者が、裸同然の恰好で座り込んでいる。

作品を見せてやろうと妖艶女を探したのだが、いつのまにか姿を消してしまったので、もう誰でもよくなって、たまたま通りかかったアオキ嬢に見せたが「よく分からないわ」という。

喫茶店にはスクリーンに映画が上映されていて、ヨコヤマリエとヨコオタダノリが新宿の紀伊国屋でからんでいるのを、口をあけて眺めていた。私が「もうじきヨコヤマリエが万引きするよ」とアオキ嬢に囁くと、いつの間にか傍に立っていた妖艶女が、「そうじゃなくてヨコオタダノリが万引きするのよ」と訂正するのだった。12/29

BSCS社の依頼で講演をして各地を巡回していたが、あるときこの会社は衛星放送関連の業種とは無関係な金融ファンドと知って愕然とした。12/30

この歳になっても試験を受ける羽目になってしまったが、厭で厭で仕方がないので、終始投げやりな態度で面接を受けていると、昔の自分が思い出されてなおさら落ち込むのだった。12/31


  モンゴル人Aとモンゴル人Bが戦ってモンゴル人Cが優勝したとさ 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-25 10:36 | エッセイ

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第7巻」



照る日曇る日第789回 

 さきの第6巻に比べて、これはまたなんと天国と地獄のような中身の違いだろう。冒頭の「四捨五入殺人事件」といい「十二人の手紙」といい著者の才能が最大限に発揮された推理小説の傑作ぞろいである。

「四捨五入殺人事件」はアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」を伏線に置きながら最後にこれを鮮やかにひっくり返す離れ業が見事であるし、その内奥に疲弊する日本の農業問題という隠れた主題を装填したことも、この推理小説を一冊で二度美味しい充実した中身にする結果に寄与している。

 もっと凄いのは、十二人の書き手からなる短編を十二本の枝からなる樹木のように精密に仕立て上げた「十二人の手紙」で、別々の主人公によるばらばらな挿話が、最後の最後にある事件の人質となって一室に大集合するというオチは、前作を遥かに凌ぐ構想力の勝利であり、これこそは著者の傑作のひとつにかぞえてもいいだろう。

 しかも「十二人の手紙」の中の「シンデレラの死」という一篇の十一通の手紙は、ことごとく「公刊された十二冊の「手紙の書き方」の参考書から引用されている」というウルトラCであり、ここまで徹底された読者サービスを眼前にすると空恐ろしくもなってくる。

 巻末の「単行本未収録作品」の出来栄えもことのほか素晴らしく、とりわけ「秘本大岡政談」と未完の「花見万太郎伝」がこうして活字になったことを、泉下の著者とともに心から喜びたい。


  侵略の過去は見ざる言わざる聞かざると三匹の猿は明後日を向きたり 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-24 10:30 | 読書

坂口弘著「暗黒世紀」を読んで



照る日曇る日第787回 


本書はあとがきに書かれているように、2007年「常しへの道」に続く「第2歌集」で、2000年から2007年までに詠まれた短歌334首が収められている。

連合赤軍のあさま山荘事件、山岳ベース事件などで16名を殺戮したとして1993年に死刑が確定した著者は、現在もなお東京拘置所の新獄舎で突然の執行宣告におびえながら孤独で不安な日々を送っている。

国家より死ねと言はれて十年経ぬ十年経しかと今さら思ふ
児童期より死刑は悪しと思ひゐしにそをさるる身となりたる皮肉
説得を止めさむとして撃ちにしが親に向けてと今に言はるる

1972年に逮捕されてから43年が経ち、著者は既に68歳になった。

房を出て戻ればむつと鼻をつく加齢臭に悩める歳かな
在るがままに生死巌頭に立つ身なり悪すぎる生といまは思はず
青春の思ひ出なるはわれに無しなくともよけれつくりゆかむ


時折胸に甦る懐かしき思い出、

なりたきは総理と書きて笑はれし小学四年のわれなりしかな
わが生涯一のよろこび朝日歌壇佐佐木幸綱選一席入選
かの夏に一目見しのみに忘られぬ女性にかも似る昼顔の花

我を忘れるひとときもある。

屋上に逆立ちすれば足うらに冬の陽あたりこころ温もる
ふいに立つオレンジの香よ湯上りの女性わがそばに居るがごとくに
あらざるにわが子の名前を考へをり死刑囚にして独り身のわれが

しかし当然のことながら緊張の日々は果てしなく続く。

午後を過ぎなほ来ぬけさの新聞よたがはず小菅に執行ありけむ
墨塗りを透かして読めば<蘇生せるを首しめて楽にしてやれり>とあり
看守らが毎夜のごとく自殺者を運び出だしし年もありけり

とどのつまり、これが確定死刑囚が直面している現実なのである。

いかにして車椅子の人を吊るししや吊るしし者の酷さ思へる
呼び出しから犬は十五分人間は六十分なるぞ殺処分まで
<ピエーッ!>てふ声<ドドド!>と後ずさる音きこえ執行告知をされぬと悟る
白髪がプッツン、プッツン音たてて殖えゆくと詠めり確定せし夜を


国家とは奇妙なものよ民草の殺人をとがめその罰に自らの手を血で染めたりもする 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-23 11:19 | 読書

吉田秀和述「名曲のたのしみ、吉田秀和第5巻」を読んで



照る日曇る日第786回 


 おなじみ吉田翁のNHK-FMでの名解説シリーズであります。

 ともかく語りの内容と雰囲気とがぴったりマッチしていること小林秀雄や吉本隆明などの比ではない。だいいちあとの2人なぞいくら聴いても何を言っているのか分かった試しがないけれど、この道40年以上のプロに敵うはずもありませぬ。

 第2章「ドイツ・バロックからロマン派」ではかの楽聖ヴェートーヴェン最後の日についてのロマン・ロランの回想録の中の挿話が語られています。

 「1827年3月26日午後5時15分、突然一天俄かにかき曇り、稲妻が楽聖の部屋を揺るがせ、激しく光らせました。臨終の部屋に居たのは、シューベルトの友人だったアンゼルム・ヒュッテンブレンナーただ一人。

 彼は、楽聖が突然目を開き、右腕を伸ばして威嚇するようにこぶしを天にかざし、猛々しい顔つきで叫ぶ姿をみました。それは「私は君たちに負けはしないぞ!」と叫んでいるようでしたが、急に腕を垂れ、目が閉ざされました。彼は戦闘のさなかに倒れたのです」

 そしてロマン・ロランは、「これこそが彼の最後のシンフォニーーであった」と付け加えている。

 と吉田翁は紹介されているのですが、なんか私たち「ヴェートーヴェン最期の日」という映画をみせられているようで、劇的でドラマッチックな解説だと思いませんか。

 ハイ、もうお時間来ました。またどこかでお会いしましょうね。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。


  さようならはいサヨウナラ左様なら親しきひとが次々に死ぬ 蝶人
[PR]



by amadeusjapan | 2015-05-22 11:04 | 読書

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
by amadeusjapan
プロフィールを見る
画像一覧

以前の記事

2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月

最新のコメント

sukebass117..
by amadeusjapan at 11:47
コメント失礼します。 ..
by sukebass117 at 14:39
こんにちは。 私も汐留..
by desire_san at 23:10
santiargonさ..
by amadeusjapan at 14:18
明白な輪郭も色彩もなく、..
by santiargon at 13:54
santiargon さ..
by amadeusjapan at 11:21
desire_sanさん..
by amadeusjapan at 11:19
こんにちは。 私も六本..
by desire_san at 06:39
埴谷雄高の『自動律の不快..
by santiargon at 04:23
こんにちは。 私も六本..
by desire_san at 13:23

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

画像一覧