晴風万里

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西暦2015年極月蝶人花鳥風月狂歌三昧



ある晴れた日に第356回


いくら野良犬でも解剖してはいけません綾部高校生物クラブ

亡き父と同じ年まで生きたのでもう明日からは楽しき余生

時代劇の名悪役として知られたる五味龍太郎静かに逝きたり

「ジェジェジェジェ」の賞味期限が尽きたので「びっくりぽん」に乗り換えてます

マーリンズ外野の控えに甘んじて鈴木一郎ストーブにあたる

てやんでえ消費税などみなやめっちまえ景気などすぐに回復するじゃろ

ひむがしの空より谷戸に光差し竜胆の花いま開かんとす

いくたびも迷いし末に需めたり十年連用日記既に古稀過ぎたれば

古稀過ぎて迷いし末に求めたり博文館の十年日記

なにゆえにいくら探しても見つからぬわたくしと天皇を結ぶ一本の糸

大丈夫君も僕も地球も太陽も日々滅亡に向かってるから

共産党昔は右翼と思いしがこの頃まともなことをいう

死に急ぐこととも知らず益荒男はひたすらけなげに生き急ぐなり

タイヒラメ美美しく並んでいるけれどとどのつまりは魚の死体

イケテルと思いしことが泥まみれ他人事ではないWの悲劇

爆買いの中国人の歓声が轟き渡る銀座八丁 

吉田翁が推薦されしレコードを師走の銀座で需めしあの頃

年の瀬に読みたき記事はただひとつ吉田秀和のお薦めCD

妻は子の我は我のみの行く末を案じて眠れぬ寒き夜かな

書を捨てて街へ出よと妻は説く寺山修司を知ってか知らずか

むざむざと鴉と雀に喰われけり無住の隣家の鈴なりの柿

蟷螂の腹より出でし発条にデザインされた舗道を歩む

シューベルトの「未完成」を聴きながら思うこといかなる生も未完成なり

外出の時は新しい肌着を身につけるいつどこで何があるか分からないので

マカ不思議有名人物の名さえついてればただの紙切れが札束に化ける

淫行という言葉の妖しさよ生涯に一度くらいは淫行したし

熱海にも鎌倉にも支局持つNHKの人の多さよ

基督も博士もいない聖夜祭

轟々と万物流転す極月尽


     原節子野坂昭如三津五郎水木米朝鶴見俊輔 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-31 12:28 | 詩歌

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第30回




西暦2015年師走蝶人狂言畸語輯&バガテル―そんな私のここだけの話 op.221



生協の配達の女性が「今日で仕事を辞めます」と告げた。すべてに別れというものがある。12/1

決められた原稿ばかり読み続けているアナウンサーが、公共の電波を通じてではあるものの、些細な私事や、常日頃自分が胸中の奥底に秘めていた感懐を吐露することは、年に一度くらいは許されてもよいのではないだろうか。12/2

朝日新聞の同じぺージに連載されている沢木耕太郎の「春に散る」の下らなさと、大昔の漱石の「門」の面白さを見せつけられるにつけ、小説の進歩などないのだと思わせられる。12/3

思うに新聞小説には、本編の「大きな山」のほかに日々掲載される原稿の中にも「小さな山」がなければならない。「それから」でアマチュア作家を脱してプロフェッショナルに変身した漱石には、そのことが分かっていたが、沢木選手は呑みこみが悪いようだ。12/4

いくら節約を旨としていても、冠婚葬祭や突然の事故や病気や手術や入院や療養費、あまつさえ不条理な税金のふんだくりを強要されるので、結局この世ではいくらあってもお金が足らないということになる。12/5

年賀状だって毎年もうやめにしようと思うのだが、こちらがやめても向こうから来れば書かざるを得ないし、これが浮世の義理人情だと思いながら、今年もそして来年も続けていくのだろう、わが人世のごとく。12/6

とても大事だと思っていた件に限って、度忘れしたり無意識に棚上げしていたりする。人世なんて、あっという間に流れ去ってしまうというのに。12/7

御大層な大理論は私には無用の長物だ。ふと流れてきたひとふしの調べ、ふと小耳にはさんだ片言隻句に激しく心惹かれるのである。12/7

憲法9条の戦争放棄の規定は、同時進行していた国連の理想実現への努力とわかちがたく結びついていたのでした。日本は世界に先んじてモラル・リーダーシップを発揮するのだと46年2月21日にマッカーサーは幣原首相に述べていたのです。加藤典洋「戦後入門」12/9

安保法制については自民の言いなりになっておきながら、目糞鼻糞の軽減税制について赤ん坊のようにグジャグジャいちゃもんをつける。公明党ちゅうのはどうしようもない政党だな。12/9

そもそも「維新」なんて名前がダサすぎる。こういう名前を有難がり、こういう名前が象徴するなにやらきな臭い思藻のようなものに慕い寄ってゆく政治家の、時代錯誤の知性と感性からは、もはやなにも期待できないな。12/9

同じ局でも、アナウンサーによって金星探測機「あかつき」のアクセントがちがう。最初は「か」を強く上げていたのに、途中から4文字を同じ高さでフラットに発音するように転向したアナウンサーもいた。ま、どうでもいいようなものではあるが、どっちが正しいのだろうね。12/9

晩年にリヒテルがイタリアの寒村で演奏したバッハを聴いていると、人世と音楽がひとつに溶け合った枯淡の境地がゆくりなく伝わってきて、ああ、これでいいのだ、という気持ちになってくる。12/12

軽減税率を巡る自公のボス交のおかげで、彼奴等が公約していた「社会福祉への手厚い配慮」などは完璧に闇に消え去り、その代わり増税に次ぐ新たな増税が浮上してくるというわけだ。消え去るべきは自公だ。12/13

「自虐史観」批判と「自賛史観」肯定は謝罪および謝罪要求の回避という1枚のコインの表と裏なのです。加藤典洋「戦後入門」12/14

障害基礎年金を受け取っている精神・知的・発達障害者のうち、1割に当たる約7万9千人が、来年度から支給停止や支給減額になる恐れがあるそうだ。自公民草テロ政権は、富裕層を限りなく優遇し、返す刀で貧民老人病人障碍者を限りなく抑圧しようとしている。12/15

対米従属を脱し、国民本位の政治的自由を回復しなければなりません。つまり完全な独立国家となることが必要です。しかしそれは一国的ナショナリズムのためではない。インターナショナリズム、国際主義を通じての「誇りづくり」がここでの理念的基軸なのです。加藤典洋「戦後入門」12/14

斉藤斎藤、蘇我倉山田石川麻呂、クルム伊達公子、ヨハンネス・クリュソストムス・ウォルフガングス・テオフィルス・モザル。夫の姓か妻の姓かの二者択一でなく、その両方を取り込み複合する重層的な第三姓を創造することが、自由な個人が作る新しく自由な家族にふさわしい。12/18

定義不能な、しかし大臼歯に潜む虫歯のように、明らかに急速に進行しているファシズムの暴威が、われらの市民社会の土台骨を揺さぶり、その地下茎を腐敗させている陰々滅滅たる軋みと震動が聞こえてくる。12/19

それにしても、芸能人やタレントやらモデルに踊りながら歌を唄わせ、商品名を連呼させればそれで一丁上がり、と考えている企業や広告製作会社やクリエイターの知性と感性の劣化は、そら恐ろしいばかりだ。12/20

自民党に政治献金を始めた銀行なんかに、おいらのなけなしの現金を預けたくないな。12/20

「どん兵衛」とかインスタントラーメンを食べるとまずくて軽い吐き気を覚えるが、中国や東南アジアの人たちもようやくそれに気付き、(ずっと以前から気付いていてもお金がないから仕方なく食べ続けていたのだ)、ちゃんとした普通のラーメンに触手を伸ばすようになったそうだが、こういうのを食の進歩というのだろう。12/20

27年間同じ場所に立ち続けた天皇が、いつのまにやら戦後民主政治の最大の擁護者として、左岸に突きだす灯台の一隅を照らす光になろうとは、いったい誰が予想しただろうか。12/23

クルト・マズア死す、88歳。この指揮者はドイツ統一の旗頭として名をあげ、NYフィルのシェフになったりしたが、肝心の音楽ではメンデルスゾーンの交響曲録音以外ではあまり記憶に残っていないなあ。12/24

国の赤字が1000兆円を突破しているのに、安倍蚤糞はそこにはまるでメスを入れず、膨大な金を外国にばら撒いたり、軍事費を限りなく膨張させたり、軽減税率で公明党や新聞社の御機嫌を取ってぬかりなく参院選対策をしながら、次世代につけを回している。12/25

降誕日の朝、異なる3か所で光と戯れる4頭の紫小灰蝶(ムラサキシジミ)を見た。幼虫の食草は常緑のカシ類。成虫で越冬するのだが、無事に春まで生き延びてほしいと願わずにはいられない。12/25

さて問題です。ナチの手先になってフランス国民を裏切りながら20世紀のふぁちょんを革命した女ココ・シャネル。その罪と功績はどちらが大きいでしょう?12/25

ユニクロのパンツはわりあい簡単にジッパーが故障する。あれは左翼と右翼が呵責のない非妥協的な戦いを開始してしまい、第三者機関が上を下への大騒ぎをして調停不能でもはや誰も身動きできなくなったせいだ。12/25

善き人の善き詩に出会うと、自分も善き詩を書きたくなるが、そうではないと詩なんか全然書きたくなくなる。12/24

「いいね」を押すのは単なる礼儀や無自覚な反射的行為であったとしても、その心根の奥に背後にあるのは好意の贈与であるから、それが分かった人は、その贈与をいいねで返す。12/27


  死に急ぐこととも知らず益荒男はひたすらけなげに生き急ぐなり 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-30 11:58 | エッセイ

なにゆえに第22回~西暦2015年師走蝶人花鳥風月狂歌三昧



ある晴れた日に第355回


なにゆえになんーもせんうちに師走となるんやあかんあかんこのままではあかん

なにゆえに貧乏人から税金を毟り取る安倍蚤糞が外国土産にばら撒くため

なにゆえにまたしても奥歯が痛む岸本先生が削り残したから

なにゆえにあかりちゃんはいつもバス停まで走ってゆく彼女のお母さんもそうするので

なにゆえに今日も朝から微熱が出るの右の奥歯が腐っているから

なにゆえに狂ったように拍手するパーヴォ・ヤルヴィ&N響の凡なる演奏

なにゆえに秋の次には冬が来るすべての家を眠らせるため

なにゆえに3万円を下流老人にばらまく参院選で買収するため

なにゆえに軽減税制でがたがた言ってる安保法制では言いなりだったのに

なにゆえにうちの息子は施設を休むこんな天気じゃやってらんない

なにゆえに道に小川が流れてる左の溝が堰き止められから

なにゆえに乾燥するのに6時間もかかるお外はだんだん晴れてきたのに

なにゆえに仕事がいつまでも終らない私の生が終らないから

なにゆえに今日もしくしく歯が痛むそれがおいらが生きてるあかし

なにゆえに車をぶつけて黙ってる君には良心というやつがないのか

なにゆえに新聞までも税軽減政権批判をさせない謀略

なにゆえに赤色警報が今日も出る北京は人間の住むところではない

なにゆえにワルターの音楽は温かい還暦にチャンチャンコを貰ってたから

なにゆえにブーレーズの指揮は冷たいお母ちゃんに抱きしめられなかった

なにゆえにクルト・マズアの「第九」は途中で止まったN響コンマスのチョンボゆえ

なにゆえにいくら探しても見つからぬわたくしと天皇を結ぶ一本の糸

なにゆえに朝の洗濯が終らないあと3分が延々続く

なにゆえにうちの息子はまだ帰らない超満員の江ノ電に乗ったか

なにゆえに関西人は列を守らぬ電車が来るとワッと駆け寄る

なにゆえに聞いただけですぐ分かるマリア・カラスと美空ひばり

なにゆえにHMVのHPは無茶苦茶になったのかかのローソンに買収されたので



なにゆえに「自閉症」が「自閉症スペクトラム」に名称変更 耕君が虹の彼方に住んでいるので 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-29 13:53 | 詩歌

年の瀬のモーツァルト



音楽千夜一夜 第354回

 誰がどんな楽器でどのように演奏しても楽しめるがモザールであるが、ここではフランツ・ブリュッヘンの指揮によるアムステルダム・モーツアルト・アンサンブルがヤープシュレーダーを迎えて演奏したヴァイオリン協奏曲やフランス・フェスターによるフルート協奏曲などが典雅な調べを奏でる。

 いずれも古楽器による演奏であるが、これがその時代に実際に鳴った音であるかいなかを論じるようなやぼをいうひとはもはや誰もいないだろう。

5枚のうち4枚は録音に定評のあるSEONレーベルなので、ことのほか香ばしい音で奏でられる。年始年末にふさわしいクラシックの逸品として推せるだろう。


  マーリンズ外野の控えに甘んじて鈴木一郎ストーブにあたる 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-28 13:00 | 映画

邦画をみるずら



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.957、958


○市川昆監督の「黒い十人の女」をみて

和田夏十脚本が下らないので才人市川昆も腕の振るいようもなかったのだろう超がつく愚作である。せっかく水もしたたる全盛期の山本富士子や岸恵子が出ているというのに勿体ない。本作なんかじゃなくて別のに出ればよかった。


○大森美香監督の「プール」をみて

タイの田舎に住む日本人たちの静かな生活を描く。そこに流れるゆるやかな時間の流れと映画的時間の流れがシンクロするときに平安を感じる。


○保坂延彦監督の「そうかもしれない」をみて

耕治人の原作を2005年に映画化したもの。認知症になった老妻を介護しつつ自らも病魔に斃れる老作家。2人の愛と哀切な生涯を桂春団治と雪村いづみが熱演。なんというか人ごととは思えない映画である。

  
   古稀過ぎて迷いし末に需めたり博文館の十年日記 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-27 11:30 | 映画

懐かしのBBをみる



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.957、958


○ミシェル・ボワロン監督の「殿方ご免遊ばせ」をみて

原題は「パリ娘」。しかしただのパリ娘ではなく仏蘭西大統領のお転婆娘をブリジット・バルドーが演じ、大公のシャルル・ボワイエや夫のアンリ・ヴィダルを手玉に取る恋と遊びの楽しいロマニチッチコメディ。たまにはこういう映画もいいな。


○ロジェ・ヴァディム監督の「素直な悪女」をみて
自由奔放に生きる女ブリジット・バルドーが渋い中年のクルト・ユルゲンスとジャン=ルイ・トランティニァン兄弟の3人の男を手玉に取って我が道を行くお話。当時のセックスシンボルのバルドーをみせびらかすべく凡庸な監督が撮った凡庸な映画ずら。


  タイヒラメ美美しく並んでいるけれどつまりは魚の死体なり 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-26 13:04 | 映画

イーストウッドの映画2本ずら



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.955、956 

○クリント・イーストウッド監督の「J・エドガー」をみて

 俳優として成長したあのディカプリオ選手が、FBI長官のフーバーをいそいそと演じている。あと20年もしたら名優になるかもしれないな。

 フーバーはVIPの個人的秘密情報をこっそり入手してそれで大統領や司法長官をゆするものだからニクソンまでは誰も首を斬れなかったのである。あの地獄の仏蘭西革命を生き延びたジョゼフ・フーシェにちょっと似ているな。

 しかしフーバーがホモとは知らなかったずら。

○ドン・シーゲル監督の「白い肌の異常な夜」をみて

 女の園に逃げ込んだ北軍兵士が両手に花、酒池肉林と喜んだにも束の間、足を切断されたばかりかとうとう毒殺されてしまうという笑えぬブッラック喜劇ずら。イーストウッドも妙な映画に出たもんだ。というかそんなチョイスさえ出来ない売り出しちうの時代の産物であろう。


  イケテルと思いしことが泥まみれ他人事ではないWの悲劇 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-25 16:39 | 映画

共和国について~これでも詩かよ第165番



ある晴れた日に第354回


ある朝、アベ独裁体制にドタマに来たイシバ地方創生相が突如逆上した。

ギャクジョー、アタマニキタジョー、アシタノジョー。

「どこへ行っても地方は全部死んでる。どんな田舎でも国が助けてくれることだけを期待している。オラッチはもう知らん、シラン。お国のあてなんかに期待せずに、あんさん自主独立して勝手にやってみなはれ!」

すると「ああそうですか」というて、岩手県上閉伊郡大槌町が1982年の独立宣言を33年振りに更新し、改めて新キリキリ国として独立した。

キリキリ、ギリギリ、キリギリス。

その翌日、「よおーし、そおゆうことなら}というて、
普天間基地問題で業を煮やしていた翁長沖縄県知事が、日本国からの独立を宣言し、
「琉球共和国」として生まれ変わった。

するとその翌日の翌日、なんたら維新の連中が、選挙で大勝した勢いに乗って「てなもんやおおさか狂騒国」なる新都市国家を樹立した。

カワッタ、ワカッタ、キョウワコク。

それからしばらくして、オラッチの在の十二所村が、村民二百名の総意で独立した。

ドクリツ、コクリツ、ドクリツコウドウタイ。

あとは一瀉千里だった。

イッシャセンリ、サクライセンリ、センノリキュウ。

かのリヴァイアサンのごとき怪物に成りあがった新日本帝国から、離脱する市町村共同体が相次ぎ、この国はあアッというまに三々五々、四分五裂さ。

アラアラアラ、サンザンブンレツ、リヴァイアサン。

で、なにが起こったって?

帝国は、たちまち徳川家不在・天皇家不在の江戸時代三百藩体制
のような独立国割拠の状態に逆戻り、
民草は、思い思いの憲法と政治経済社会体制を選んで、
末永く、それなりに仕合わせに暮らしましたとさ。

うむwmwm、ソレデイイノラ、ソレデイイトモ。


         基督も博士も見えず聖夜祭 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-24 14:20 | 詩歌

林望謹訳「平家物語一」を読んで



照る日曇る日第834回

 前著「源氏物語」の好評をうけて、いつのまにか「平家物語」の現代語訳が出ていたので一読しましたが、やはりこの人のは非常に分かりやすく読みやすい。

 本巻では巻第一から第三までを扱っているが、なんというても冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことはりをあらはす」が源氏物語枕草子、徒然草、方丈記、芭蕉と並ぶ名文句でこれあればこそ、万巻の書物に抜きんでることができたのに違いないですな。

 おごれる平家、なかんずく頭領清盛の人もなげな横暴と、長男重盛の知的な沈着冷静とがことごとに対比され、あほばか清盛がもっと大人しくして野望を抑えていたら、あのように無惨に源氏に滅ぼされることもなかったろう、と言わんばかりの書き方であるが、さあどうであったろうかなあ。

「巻一」では早くも平家打倒を企む後白河院の意向を先取した鹿谷の陰謀が暴かれ、「巻二」では、首謀者一味の丹波少将所成経、平判官康頼入道、俊寛僧都の喜界が島流しが描かれている。

 流された彼らは、なんとか放免されて都に帰還しようと、「全島をくまなく歩いて熊野三所権現の再現を図った」と書かれているが、最近の研究現地調査でそれがその通りであったことが明らかにされたのは、この平家が単なる空想的なものがたりではなかったことを物語っているんだね。

「巻三」では重盛のとりなしで清盛は二人を赦免する。が、なぜか俊寛のみは取り残された。その俊寛を召使いの有王という少年が訪ねてきた、という叙述が本物であると信じられるのも、少年の問いかけに対して俊寛が、「この島には喰い物などないので、山に登って硫黄という物を掘り、九州から通ってくる商人に売ってこれを食い物に変えた」という証言を記録しているからにほかならない。

 平家は単なる文芸書ではなく、貴重な歴史書でもあるんであるんである。

  年の瀬に読みたき記事はただひとつ吉田秀和のお薦めCD 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-23 12:45 | 読書

ジョン・フランケンハイマー監督の「RONIN」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.954

 1998年製作のアメリカ映画で、ロバート・デ・ニーロ、ジャン・レノが出演している。

 冒頭と中ほどで、日本の武士の話、赤穂浪士の切腹の話が出てくるが、映画自体は謎のスーツケースを世界各国が奪い合うスパイ大作戦物語なり。

 さすがフランケンハイマー、これは今にも大事件が起こるのではないかとハラハラドキドキさせる異常な緊迫感が暗い画面に漂うが、「五月の七日間」ほどの面白さはない。

 一番の見どころは街中で繰り広げられるカーチエースのど迫力だろうか。


     爆買いの中国人の歓声が轟き渡る銀座八丁 蝶人
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by amadeusjapan | 2015-12-22 12:57 | 映画

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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