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晴風万里

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西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧



ある晴れた日に 第358回


隣の庭にたわわに鳴れる柿ことごとく鳥たちの御馳走となる

耕君から「お父さん怒ったり注意したりしないでね」と云われてしまった大晦日

ひとつ家に四人が眠るお正月

正月の眠りを醒ます核実験たった一発で夜も眠れず

短歌雑誌で有名選者の詠草立ち読みしたがこれはすごいと思える歌なし

津津浦浦自公のポスター貼られたり総閉塞のこの国の冬

目の色を変えてラアラア叫んでる水爆水爆それがどうした

品性のひとかけらなきキャスターがしたり顔にて喋りに喋る

千代田区隼町2丁目の「光解体」てふ会社が妙に気になる

おめでとう!琴奨菊の初優勝やれば出来るのだな日本人も

火曜日の危険物ゴミに出されている黒黄まだらの巨大なバナナ 

なんとなく先に逝く人が羨ましいそんな時代に生きてるわれら

レッツダンスなどと人を踊らせ自らは唄っているだけデビッドボウイ

高橋の源一郎が急ぎゆく鎌倉駅の東口かな

海鴎ヒチコック映画の如く来襲す源氏池

男ではなく女でもなさそうな第三の性

男でもあり女でもあるような私たちの性

ほんたうの愛を求めてプルーストジェンダーの魔境を軽々と超ゆ

若者がカセットテープに夢中だとか個体は系統発生を遡る

大阪の心斎橋の大丸の子供服売り場で走ったあの頃

耕君の区分判定は4なるが5を目指して検査に行きけり

わたくしに内緒で国境なき医師団に3千円寄付せし妻よ隠さずともよし

バーキンのジーンズ姿見て入店を拒否した有楽町の仏蘭西料理屋

なにゆえに微かな恐怖が湧いてくるプラットフォームの先頭に立つとき

選ばれた62人の金持ちが36億人の貧乏人の資産と同じお金を持っているとか

目の前の息子の耳を眺むればその姿形の好ましきかな

物を売ることにまつわるさまざまな手立てはつねにいささか物悲しきかな

中国かバングラデシュの誰かが縫ったユニクロのシャツを着て東京行の電車に乗りこむ


     ハスキルのピアノに抱かれる冷雨哉 蝶人
     ハイドンの「五度」聴き終わり春の雪
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by amadeusjapan | 2016-01-31 10:33 | 詩歌

ドナルド・キーン著作集第13巻「明治天皇〔中〕」を読んで



照る日曇る日第840回

明治8年の「江華島事件と東奥巡幸」から明治28年の日清戦争の勝利までを、「明治天皇紀」をベースにしながら、内外の様々な文献を自在に引用しつつ、明治という時代の政治経済社会文明人間模様について極力冷静客観的な音吐によるキーン史観で物語っている。

特筆すべきは、そんな時代史でありながら筆致は無味乾燥に陥ることなく、天皇自身や皇后、宮中の側近、伊藤博文をはじめとする木戸、岩倉、三条、大久保、西郷、大隈、板垣、黒田、井上、陸奥、山県などの元維新活動家の活動が活写されていることで、天皇が時々政務に倦んだ折に最新の洋装で陸海軍の演習に嬉々として臨んだ昭憲皇太后のイメージは、さながら女帝推古のごとく鮮烈である。

当時の日本がどのようにして台湾を手に入れ、朝鮮を保護すると称して植民地化していったか、またその延長線上の「腰撓めの状態」でずるずると日清戦争に突入していったかは、この本を読めば手に取るように分かるが、思えば清国があれほど不用意に連戦連敗したことが、その後の日本の帝国主義的侵略の道を切り開いてしまったともいえよう。

けれども日清戦争における我が軍の旅順虐殺事件の暴虐ぶりは、その後の南京虐殺の先蹤ともいいうる戦慄すべきもので、個々には忠良な民草が、組織された暴力組織の指揮下では、野獣のごとき集団殺戮行為の先兵となるDNAに裏打ちされていることを雄弁に物語っている。

興味深いのは、あれほど屈辱的な治外法権の条約を改正を巡って国論が分裂したことで、陸奥は国是に反すると知りつつも外国人恐怖症におびえる衆議院の現行条約励行派と長年にわたって戦い続けなければならなかった。

真の国益とは何か、を断じることは、昔も今も難しいものである。


 選ばれた62人の金持ちが36億人の貧乏人の資産と同じお金を持っている 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-30 10:54 | 読書

国立劇場で「通し狂言・小春穏沖津白波」千穐楽をみて



茫洋物見遊山記第196回

河竹黙阿弥生誕200年を記念して半蔵門の国立劇場で正月の3日からうたれていた公演も今日が最後の千穐楽です。

黙阿弥の「幻の名作」の2002年以来の再演でしたが、大詰第2場の「鎌倉佐助稲荷鳥居前」の小狐礼三の大立ち回りが凄かった。
いえ、演じた尾上菊之助が凄いんじゃなくて、国立劇場の大道具と大仕掛けと荒事(若い役者のアクロバット)と美術が素晴らしかった。

赤い鳥居さんを素材にして、これを上下左右に自由自在に大車輪のように回転させ、その鳥居の上で一糸乱れぬ立ち回りと&大追跡&大捕物の超絶的曲芸を次々に繰り広げる。
歌舞伎は天下の大見世物とは我ながらよくぞいうたもの。年の初めのエンターテインメントはこれでなくっちゃ。

そういえば去年の今頃も同じ尾上菊五郎の演出で「南総里見八犬伝」の天守閣を舞台にした大詰の壮絶バトルに出食わして、エンドルフィンを盛大に垂れ流したものだったが、今回も十二分に堪能したぞえ。

もしかすると、菊五郎って新春スペクタクル・プロデュースの名人かもしれないな。
恒例の手ぬぐい巻きをとり損ねたのは残念だけど、またひとつ冥途への良い土産を見せてもらいました。音羽屋さん、恩に着ますぜ。


 国立劇場の脇にある「光解体」いったい何をする会社なんだろう 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-29 10:19 | 芸術

ジョエル・シュマッカー「セント・エルモス・ファイヤー」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.977

大学を卒業した7人の男女が、社会人になっても愛したり憎んだり、落ちこぼれのロブ・ロウを助けてやったりして青春を懐かしみながら延長させようと躍起になる「あの頃君は若かった」映画なりい。

彼らは映画の中ではしょちゅう「セントエルモのバー」でつるんでいるが、セント・エルモとは航海する船を遭難から光で守る聖人の仇名であるらしい。

  なんとなく先に逝く人が羨ましいそんな時代に生きてるわれら 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-26 13:07 | 映画

マイケル・マン監督の「ヒート」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.976


 通常の犯罪映画では悪人の家庭の事情なんかろくすっぽ描かないけれど、これは違う。正義の味方アル・パチーノと同じウエイトで凶悪ギャング、ロバート・デ・ニーロの恋人とのからみを説明しているから、対決の構図に奥行きが出るのだが、そのぶん長尺になってダレル。

 しかしラストの対決が夜の空港になだれ込むとは、ちと驚いた。

 それから善玉悪玉2人の男が、女にからみとられると厄介なことになってしまう事情はよく分かったが、そもそもこの悪玉は、なんで犯罪を犯す必要があるのかさっぱり分からない。強盗なんかやらなくとも金はありそうだし。


   おめでとう!琴奨菊の初優勝 やれば出来るのだな 日本人も 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-25 11:27 | 映画

フレッド・ジンネマン監督の「わが命つきるとも」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.975

 1966年の英国映画でヘンリー8世(ロバート・ショウ)に斬首されたトーマス・モアが主人公ずら。

「わが命つきるとも」はいい邦題であるとは思うが「わが命尽きるとも」と漢字にしなければ意味が通じないだろう。

 チューダー王朝を存続させるために6人の王妃をとっかえひっかえしたヘンリー8世のような好色漢に対して、いくら「筋目」を説いても聞き分けられようもない。

 信念を貫き通して毅然として死んでいったモアを(ポール・スコフィールド)が好演している。

 ぼうと眺めていても誰も気づかないと思うが、ウルジー枢機卿役にオーソン・ウェルズが出ている。


   耕君の区分判定は4なるが5を目指して検査に行きけり 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-24 11:17 | 映画

ジョン・アヴネット監督の「ボーダー」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.974

 原題は「正義の殺人者」。NY市の警官コンビ、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの御大同士が「正義の殺人者」となって諸悪の根源を手ずから退治するという話。

 いわば公権力を利用した私権力の乱用であるが、これは快感であると同時に価値観の崩壊でもあり、ついにアル・パチーノはデ・ニーロの罪をも引き受けながら自滅していくのであったあ。


 なにゆえに背中に恐怖が忍び寄るのかプラットフォームの先頭に立つとき 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-23 13:05 | 映画

夢は第2の人生である 第30回 



西暦2015年皐月蝶人酔生夢死幾百夜


私は親分に会って杯を返すと、その足で丘を登って、宿敵の組の親分をドスでぶすりと殺った。5/1

いつもと同じように、ユニクロのパンツ一枚で会社に行くと、先輩も同期も後輩も、社員の全員が見ないふりをして、私から遠ざかっていくのだった。5/1

我われは極めて限られたメンバーでクーデターを成功させたのだが、軍の首脳部は、その影響が内部に及ぶことを懼れて、我われを遠島に隔離した。5/2

ある目立ちたがり屋のデザイナーが、「もう一度だけ自分のショウをプロデュースしてくれませんか」と懇望するので、仕方なく引き受けたのだが、彼奴は東コレの本番で猫の首をちょんぎるというあざとい演出に打って出たので、私は即座に彼奴の仕事から手を引いた。5/3

「もう少しで宿屋に着くが、あっしはこの先輩とここで一杯やっているから、あんたがたは道を急ぎなせえ。今まで3人でやってきたのが、あんたたち2人になっても大丈夫でがんしょう」と、私は茶店に腰を下ろしながらいった。5/4

海を超え、野山を越え、川を渡って、魔術師が世界中からこのデラシネ村に集まって来た。「つい先ごろ亡くなったばかりの母親を、この世に呼び戻した者には、なんなりと望みの物を与えるであろう」と。この国の独裁者が言明したからだ。5/5

「もうそろそろドラちゃんがやってくる頃よ」と妹がいうので、辺りを見回すと、首から下がちょん切れた愛らしいドラ猫が、空中を飛びながら近づいてきて、私と弟と妹の足元にじゃれつくのだった。5/6

マガジンハウスのMさんに呼び出されて銀座を歩いていたら、欲しかった着物があったので、それを買って「じゃあここで失礼します」と挨拶したら、「いやいや、ここであなたに帰られたら困る。今から社まで来てほしいんです」という。5/7

言われるがままについて行くと、旧知のK氏とO氏が、社の2階のカフェに座っていたので驚いていると「実は来年新雑誌を創刊することになったので、あなた方3人が協力して立ち上げてほしい」と言うので、またまた驚いた。5/7

「しかし私はもう古稀で、棺桶に片足をつっ込んでいる隠居の身だから、そんなの無理です」と辞退すると、М氏は「実務は全部2人がやるので、あなたは何もしなくて結構です。ただひとつお願いがあります。今すぐその着物を返して、創刊パーティ用のフォーマルウエアを買ってきてください」と言うのだった。5/7

最新型の水陸両用艇で、逆巻く海に乗り入れた私たちだったが、猛烈な大波をまともに食らった航海士は、嵐の海に投げ出され、代わりに舵を取ろうとした私の頭の上から、大量の海水が圧し掛かって来た。5/8

土砂降りの真夜中に、六本木のインクステックに行ったが、誰ひとり客はいなくて、天井からぶら下っているモニターには、時折思い出したように泡立つノイズが点滅していた。5/9

雨がざんざん降りのカフェバーで、電通総研のSという男のO脚の秘書と仲良くなった私は、ライオネル・リッチーの武道館コンサートへ行ったりして様子を見てから、今夜こそは落としてやろうと土曜の夜に待ち合わせをしたが、O脚女はいつまで経っても姿を見せなかった。5/9

「ハイハイ、今日はみんなを元気な良い子にしてあげようね」と言いながら、作男の亀次郎は、風邪を引いて熱を出している私以外の子供を、まるで甲羅を裏返しにした亀の子のように、澪標の上に仰向けにしていった。5/10

せっかく治ったと思った風邪がぶりかえして、咳は出るし熱もあるのだが、暮しのために無理に働いていたら夜中に倒れた。すぐに救急車を呼んだが、どうも不吉な予感がしたので「子どもと家のことは何卒よろしく」と言いながら家内の背なをそっと抱いた。5/11

案の定、湘南鎌倉病院に急ぐ救急車の中で、私の頭はぐんぐん伸びて、まるでカラフルなシルクハットを10個積み重ねた状態になったのであった。5/11

鯉元という女が、私のギャラをピンはねして逃亡していたことが分かった。5/16

午前1時20分に目が覚めたので、トイレで用を足していると、誰かが階段を下りてきたようなので、水を流してから振り返ったが、誰もいなかった。5/16

私の乗った潜水艦が寄港すると、いつもは隣り合わせに係留されていた僚艦がいないので、その訳を聞くと、私たちの後で出港したまま連絡がないという。そういえば昨日魚雷で撃沈した謎の潜水艦がそれではなかったか、と私たちは嫌な予感に襲われた。5/16

神経質なその監督は、「庭で蝶が死んでいる冒頭のシーンから、ラストの今朝の朝食のシーンまで、そのすべてを撮り直せ」と大声で喚いているのだった。5/15

辰巳組の親分が、「さあAをやるんか、Bをやるんか、はよう決めんかい。決められんかったら、2人ともワシがやっちまうぞ」と脅かすので、仕方なく「A」と答えるや否や、Aは私の目の前で消されてしまった。5/15

いくつもの夢のような物語を夢見ながら、それぞれにふさわしいタイトルをつけようと焦っているうちに、突然咳が出て、ことごとく闇に消え去ってしまった。5/16

はじめて渡世人になってみようかと思ったのだが、すでにこの世界に身を染めていた2人の兄が「止せ、止せ」ととめるので、2か月ほど観察してからのことにしようと思った。5/17

湾内にはたくさんの人間魚雷が浮かんでいたので、私は次々に試乗してみたのだが、以前乗っていたのと同じかたちの「回天」はとうとう見つからなかった。あれは死出の旅路に最適の座り心地だったのに。5/18

展覧会が迫っているのに作品が出来ないので、仕方なくせんべい布団を出品したのだが、同じことを考える奴はいるもので7人家族全員の布団を連作と称してぶら下げた人にグランプリを攫われた。なんでも子供の寝小便が激賞されたそうだ。5/19

「さあみんな今日は良いお天気だから部屋の布団をリッシンベンしよう。知らない間にダニやバイキンが巣くっていると良くないからね」と言いながら、寮長は密かに最高齢の私の追い出しを図っているようだった。5/20

竹内君とパッタリ会った。昔の会社のリストラ仲間であるが、風の噂で独立して事業を始めたと聞いていたので「調子はどう?」と尋ねたのだが、娘さんと一緒だったせいか言葉を濁したので、もしかするとうまく行っていないのかもしれない。5/21

突然雷が鳴って、猛烈な雨が降って来た。この村にひとつだけの貴重な図書館が崩壊するといけないので、私は職員に大至急戸締りをするように命じた。5/21

「3文主義」を唱えるわが病院では、1人3円で3分間の診療を行っているために朝から晩まで最貧階級の人々が門前に市をなして詰めかけるのだった。5/22

私はただ一人天守閣に籠って孤塁を死守していたのだが、敵が高い梯子を掛けて、唯一の進入路である小窓から顔をのぞかせたので、私は槍を突いては撃退していたのだが、小半時してからとうとう白旗を掲げて降参した。5/23

「寺子屋小僧、寺小屋小僧」と莫迦にされ続けていたので、なんとか独学で大学院に入学できたときには、「ざまあみやがれ、これでようやくおいらも一人前だぜ!」と、空に向かってうそぶいたことだった。5/24

長い世界漫遊の旅から帰国してみると、投資会社の社長が絶好の物件を前に何もしないで指をくわえているので、「全財産をはたいてすぐにこれを買いなさい」とアドバイスしたら、一気に相場に火がついて、彼は億万長者になりあがってしまった。5/24

私はふとしたきっかけで知り合った夫婦と交際するうちに、艶めかしいその夫人の妖しい魅力の虜となって、さながら蟻が蟻地獄の擂鉢に落ち込んでいくように沈み込んでいった。5/25

私がジャイアンツの青木のように粘りに粘って四球を選んだおかげで、次の打者は初球をヒットすることができたんだ。5/26

私は突然、自分がまだ卒論を書いておらず、履修すべき単位がいくつも残っていて、つまりは大学を卒業していないことに気づいて、焦って、急いでキャンパスに駈けつけたのだが、生憎真夜中で扉は締まっていて誰もいないのだった。5/27

S社の商売は、手が込んでいた。中古品の安い机を大量に並べておいて放火して、「ここには昔有名な大寺があった」と主張して、各方面に働き掛けてその再建の仕事を自社に引っぱってくるのである。5/28

「あんたの企画書はなかなかよく出来ている、と大手商社のMさんが褒めていたよ。早速フォローしてみたらどうだね」と専務がいうので、私はすぐに出かけようとしたのだが、肝心の企画書の中身をすっかり忘れてしまっていることに気付いた。5/29

小学館の梅沢さんの好意で、私は病気の妹の付き添いでその病院に寝泊まりすることが出来たが、妹の病が癒えたらただちに二等兵として戦場に派遣されるに違いないと思うと、夜もおちおち眠ることができなかった。5/30

今日は、私の家系の最初から四代目の祖先が亡くなった命日である。彼はそのもっと遠い祖先の時代から引き続いて時の権力者と激烈に戦ってきたのだが、それらの詳細については誰にも語らずに、さほど長くもない生涯を閉じたのである。5/30

会社は今日でお仕舞なのに、それを知ってか知らずか大道君が、アメリカの海外研修から帰国したばかりの女子からおみやげをもらって「ありがとう」とお礼を言っているのを聞きながら、私はタクシーに乗り込んだ。

運転手に「駅前の食堂に行ってね」と告げたまま、座席に寝転んで曇り空を眺めていると運転手が突然私の手をつかんで「お客さん冗談はやめてくださいよ」と言うので、握りしめていた左手を開けると、100円玉が4つだけ入っていた。5/31


   目の前の息子の耳を眺むればその姿形の好ましきかな 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-22 12:57 |

林望の「謹訳平家物語二」を読んで



照る日曇る日第839回

 それにしても「平家にあらずんば人にあらず」とまで称された清盛専制独裁政治が、なぜあれほどガタガタと崩壊してしまったのだろうか? 

 直接の要因としては、継母池禅尼の命乞いに応じて清盛が、頼朝を生かしてしまったことだろうが、14歳から北条の保護観察下にあったその頼朝自身は、以来20年が過ぎても平家に反逆しようという野望は微塵も懐いてはいなかった。

 それを無理やり尻を叩いて決起させたのはかの有名な文覚上人で、このちょっと気狂いじみた素っ頓狂な活動家のオルグなかりせば、ついに源氏による鎌倉幕府の開府は永劫なかっただろう。

 そしてその遠因をなした後白河院の皇子、高倉宮の謀反の直接の契機も、もう一人の気狂い荒武者、源三位頼政によるアブノーマルなアジテイションであり、この悪坊主の強烈オルグなかりせば、平家打倒のいささか早すぎたのろしも印璽も、かくも速やかに全国に出回ることはなかっただろう。

 昔流のマルクス主義者はなんと理屈づけるか知らないが、今も昔も革命はすぐれて人間的行為の突然変異的所産であり、その全運動を最初期において駆動するのは、無謀とも狂気とも思われる特定の運動家の突発的暴発と自己投企に他ならない。

 短兵急に極論を吐けば、源氏革命は源三位頼政と文覚上人によって連続的に一点突破され、それ以降の全面展開をもたらしたのである。


 物を売ることにまつわるさまざまな手立てはつねにいささか物悲しきかな 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-21 14:33 | 読書

アンソニー・マン監督の「テレマークの要塞」をみて



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.973


目前に迫ったナチスドイツの原爆装置を破壊しようとするカーク・ダグラスやノルウエイーのパリチザンたちのヒロイックな活躍を描く。

原爆装置を載せたフェリーには当然テレマークの市民も大勢乗っているのだが、それでももろともに爆破する作戦には私なら絶対に同意できない。

それにしても1960年の「スパルタカス」でプロデューサーのカーク・ダグラスに解任されたアンソニー・マンはどういう気持ちで5年後のこの映画を演出したのだろう。


 なにゆえにマーラーの二番を二枚組にするCD一枚に収められるのに 蝶人
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by amadeusjapan | 2016-01-20 13:00 | 映画

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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