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晴風万里

林望訳「謹訳源氏物語8」を読んで



照る日曇る日第533回

源氏が「雲隠」してから物語は第2部の宇治十帖に入り、薫が美しき姉妹を相手にむなしい独り相撲を取る。

薫の推挽でたちまち妹の中君をものにした匂宮とは正反対に、薫中将はなにごとにつけてもぐずぐず考え込み、慎重で積極的に行動せず、常に大魚を逃している。こういう人は今も昔も世間には大勢いて、他ならぬ私もその一人だが、こういう小説の中で読まされるとじつにいらいらする。

恋焦がれる大君を喪ったあとで、アホ馬鹿な薫がひとりごちたように、うまく立ちまわりさえすれば、彼は宇治の陋屋に隠れ棲む身寄りのない姉妹を二人ともおのが手中に収め、大君を死なせずにすんだはずだが、そういう駄目さ加減がこの悲劇の主人公の持ち味であり、著者の紫式部が絶妙に仕組んだ現代的な役どころであった。

同じようにいやらしい匂いを周囲に撒き散らすライヴァルの二人ではあるが、女を肉欲の対象とせず、まずは一人の人間とみなす立場を終始堅持している点で、アホ馬鹿薫は肉食ノータリン男の匂宮を数頭抜いていると考えられる。


東電は潰れてしまえと言えぬのはK子ちゃんが働いているから 蝶人



by amadeusjapan | 2012-08-20 09:07 | 読書

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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