晴風万里

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「一四やぐら」を訪ねて



鎌倉ちょっと不思議な物語第167回

私たちはまず北鎌倉の「西瓜ヶ谷やぐら」を訪ねました。鎌倉時代に鎌倉とそれ以外の地を切り離している地点に十王堂橋がかかっていました。ここには関所(交番)もあり、この十王堂橋から大切岸(瓜ヶ谷やぐら)または梶原方面に抜ける切り通しがあったと伝えられています。あの一遍上人が北条時宗によって追い払われたのもまさしくこの場所ですが、私たちはここから坂を登ります。

「西瓜ヶ谷やぐら」は別名「一四やぐら」ともいわれ、このやぐらを含む森全体が遺跡とみられています。かつてここには寺院があり、埋蔵物も多いと考えられています。
ちなみにこの瓜ヶ谷という地名は、かつて源頼朝の乳母、比企の禅尼がこのあたりで瓜園を造ったからだそうです。そのせいか、この近所では都会では珍しくまだ田圃が残っています。

山麓にある「一四やぐら」は鎌倉時代後期の造立で、一級の厚肉彫五輪塔が残存しています。五輪塔とは五つの鎌倉石を積み上げた塔で、下からそれぞれ地輪、水輪、火輪、風輪、空輪と呼んでいます。

ここでは故人の冥福を祈る追善供養のために、初七日から7日ごとに五輪塔を造り、後に一周忌などの法要にさらに塔を増築したと思われます。また中央の大型の塔(四五日法要用)には梵字の一部が残っています。

板碑と五輪塔はかなり風化していますが二か所あり、上段のやぐらは左側にも広がっていると考えられます。五輪塔の下の塚は人工的に盛り土されたもので「富士塚」または「経塚」跡とみられています。



♪息をしていないよと叫ぶ妻に驚きて飛び起きし朝もありき 茫洋
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by amadeusjapan | 2009-03-22 10:20 | 鎌倉案内

「やぐら」はインド、中国渡来 



鎌倉ちょっと不思議な物語第166回


広辞苑によれば「やぐら」とは「岩石に穴を掘って物を貯蔵しておく倉。また墓所。鎌倉付近に多い」と解説され、矢倉あるいは窟という漢字があてられ、イハクラ(岩倉)の訛りではないかと想像されています。しかしこのような即物的な記述ではこの窟の宗教的な背景を捉えそこなってしまうことは前回に申し述べたとおりです。イハクラがどうしてやぐらに転訛したのかも言語学的にはおおいに怪しまれるところです。


斉藤顕一氏の見解では、やぐらという言葉自体が江戸時代になって定着したものだそうです。つまりあのような岩窟を鎌倉時代になんと呼んでいたかは分からないというのです。鎌倉時代から江戸時代までにはおよそ400年の歳月が横たわっていますが、私たちが現在鎌倉と鎌倉時代の文物についてもっともらしく語っている情報の7割以上がで出所が不明か怪しいと言われるのですから、なにを信じ、なにを退けていいのかおおいに迷います。

さてやぐらの形状については、山腹に垂直面、前面に平場、矩形の開口部、垂直の内壁と平天井、玄室・羨道・羨門という特徴を持ち、その機能としては納骨と供養をつかさどります。また火葬にされた骨を埋葬するための骨蔵器が仏像や五輪塔、宝篋印塔、板碑、壁面浮き彫りなどの傍に備え付けられており、床下には壇と龕があります。
やぐらからは華瓶、茶碗、かわらけ、小皿、写経石、古銭、鏡などが出土することが多く、内部で使用されている塗色は胡粉、漆、金泥などです。

またやぐらの起源については、鎌倉時代の宋から渡来したさまざまな文物、宗教、文化などのなかにこのやぐらという思想と建築物があって、時の幕府の要職にあった人々がこれを先進的に取り入れたのではないか、という学説が有力だそうです。ということはこうしたカルチャーはおそらく西インドのエローラ、アジャンターなどの石窟寺院や仏教文化がさまざまな仏像と共に中国に東漸し、これが朝鮮半島を経由してわが国に渡来したのでしょう。

鎌倉の立派な石窟を眺めているとE.Mフォスターの小説「インドへの道」の謎の場面が思い出されます。


♪遥かなるインドエローラ、アジャンター石窟から渡来したり鎌倉のやぐら 茫洋
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by amadeusjapan | 2009-03-17 08:02 | 鎌倉案内

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