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晴風万里

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穴澤賢著・竹脇麻衣絵「明日もいっしょにおきようね」を読んで



照る日曇る日第539回


もうこれで仕事が1カ月以上来ないので、気分を変えようと普段は読まない絵本を手にとってみた。

ある保健所で実際にあったという「でかお」という名前の捨て猫を巡るお話だが、こんなことが実際に起こるのか!というなかなかに感動的な物語であった。

いちおう犬でも猫でもどんどん捨ててしまう驕れるアホ馬鹿日本人に対する警告の書というスタイルになってはいるが、そんなことより、これはこの実話をごみ箱の中から探し出してきた作者たちのお手柄なのである。

とりわけ最後のページに添えられた「「明日もいっしょにおきようね」という一文こそ、プロの仕事といえよう。

そういえば2002年の2月に亡くなった我が家の愛犬ムクを最後に看取ったのは、1匹の名も無い茶色の猫だった。彼だか彼女だか分からないが、この野良猫は死に掛けのムクちゃんの犬小屋の中に同棲して星降る零下の寒夜をお互いに温め合い、食事を共にし最期の日々を生きたのだった。


いつの日にか君は大成するというそれまでわれは生きておるべし 蝶人



by amadeusjapan | 2012-09-16 09:23 | 読書

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第20回



bowyow megalomania theater vol.1


くそ! それにしてもどうして僕とじゃなくて、あいつとなんだ! 

くそっつ、のぶいっちゃんめ! あいつだ。あいつが悪いんだ!

そうか、洋子が悪いんじゃない。のぶいちが、のぶいちのやつが洋子をそそのかして、だまくらかして、自分の思い通りにあやつっているんだ。

くそ! くそ! 許せん。許さない。

許そう。許せば。許す時。いや駄目だ。もう絶対に許せない。

よーし。ただじゃ済ませないぞ! もお絶対にのぶいちを許してはおかないからな!



私たちがいなくなったらだれがこのこのつめをきってやるのだろう 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-22 13:38 | 読書

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第19回



bowyow megalomania theater vol.1


12月8日 曇

昨日から洋子のやつは、のぶいっちゃんをやけに親切にします。
みだりに笑いかけたり、手を握り合って浜辺を散歩したりしています。

のぶいっちゃんはそんな洋子の髪の毛にちょっと口で触れて匂いをクンクン犬のようにかいだり、やたらと身体に触ったり、もうやたらベタベタして僕のことなんかてんで相手にしてくれません。

いったいこれはどうゆうことなんだ。これはいったいどうゆう訳なんだ。

これは僕がなにか洋子に悪いことでもしたからなんだろうか? 
それで急に僕のことがきらいになったからなんだろうか? 

いくら考えても分かりません。きのうだって洋子のやつ、僕とじゃなくのぶいっちゃんと一緒に寝やがって……

くそ!くそ!くそ! なんて悪い女なんだ! その前の夜はあんなに僕ちゃんのことを愛してくれたのに……

もう僕は女の子なんて信じられない。きっと洋子は、どんな男の子とだっていいんだ。あいつは誰とでも寝るような女なんだ、あいつは……。


晩節を全うするは難し鎌倉蝶 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-20 07:33

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第18回



bowyow megalomania theater vol.1

いままで洋子も、死んだ文枝もただの女の子で、ただの友達で、特別の感情は全然抱いたことはなかったのに、どうして僕ちゃんは突然こんな訳の分からん気持ちにはまりこんでしまったのでしょうか?

ああ、たまらない、たまらない。切ないおう、切ないおう。困った。困ったおう。

こんなことは生まれてはじめてだあ。さあ、どうしよう。どうしたらよいのだ。

と叫びながら、灰白色にかげってきた砂丘の頂上から盆のくぼみの奥底までぐるぐるぐるりんと自分から身投げして寝転びながら急速度で落下していくと、僕の頬も、髪の毛も、首も、胸も、パンツの中のオチンチンまでも砂だらけになってしまいました。

 
参人の娘に日替わりで介護される母の無上の仕合わせ 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-19 10:45

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第17回


bowyow megalomania theater vol.1



僕は涙が流れていましたが、どうして涙が出てくるのか分かりませんでした。

あの可愛らしい洋子を一人占めしたい。朝から晩まで自分のものにしたい。のぶいっちゃんなんかに絶対にわたしたくない。口もきいてほしくない……。

そんな強い思いが僕の全身を衝き上げてきて、その衝き上げた気持ちの行き先がどこにもなく、エッエッエッエッと言って結局はおびただしい涙になるのでした。

こんな絶望的な気持ちのどん底に沈んでしまうんのなら、洋子はどうして僕とねんねグーしたのか。

いっそのぶいっちゃんだけの女であってくれた昨日までのほうがよっぽど楽でとかったのにい、と、思いましたが、そう思っただけでも胸が苦しくて、僕はいったいどうなってしまったんだろう。



  この眼脂のこの臭さがおらっちの臭さだ 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-08 19:57

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第16回



bowyow megalomania theater vol.1


昨夜のあんな気持ちの良いことを、洋子は僕とだけではなく、のぶいっちゃんともやったのだ。

僕はたった1回しかやっていないのに、のぶいっちゃんとはもっともっと前から、何回も何回もやっていたのだ、と考えると、そう考えただけで僕の胸は苦しく、頭の中は灰色に濁ってきて、もうねたましくてねたましくて、くやしくてくやしくてどうしようもありません。

僕はまだアジやイワシがじゅうじゅうと音を立てて焼け焦げているたき火にいきなり足で砂をかけて火を消して、

「チエッ、チエッ、チエッ、僕なんか、もうどうだっていいもん、どうなったっていいもん」

と言いながら中田島砂丘めがけて全力で走っていきました。

全力で走るのですが、足が砂にめりこんでうまくは走れず、よたよたと海岸の波打ち際のところでよろめき、バッタリと倒れてしまいました。



思いきや水の底より竜立ちて末の松山波越ゆるとは 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-07 09:45

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第15回



bowyow megalomania theater vol.1



12月7日 晴

見よ、東海の空明けて、あさき夢見し、酔いもせすん……

ぶどう色の朝やけを見ながら、僕はこの世に生まれてもっとも幸福な朝を迎えました。

太陽が空高く昇りきった頃、のぶいっちゃんはようやく戻ってきました。両手いっぱいのアジやイワシをかかえて……

なんでも眠れないまま砂浜を歩いていたら早朝の海で地引網を引いていた漁師がくれたそうです。

 僕たちはさっそく雑木林の中で火をおこしてとれたての海の幸を焼いて食べました。

すぐに僕たちはお腹がいっぱいになりました。お腹の中にどんな怒りや悲しみが積み重なっているときも、お腹がいっぱいになれば次第にそれがやわらいでいくということを僕はいつの間にか学んでいました。

でも、きれいな顔をした洋子が、のぶいっちゃんのためにせっせとアジのはらわたをとりのぞいて、きれいな指先でよく焼けた肉をつまみあげ、のぶいっちゃんにああんと口をあけさせて食べさせているのを見ると、突然僕のこころの奥にねたましさが首をもたげてくるが分かりました。


健ちゃんにひわいな花だねといわれつつ今朝も咲きたり紅蜀葵 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-06 14:01 | 創作

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第14回



bowyow megalomania theater vol.1



そしたらおちんちんが次第にかたくとんがってきたのに洋子が気がついて、それを手でつかんでどこかとてもやわらかくてひんやりしたところへ入れてくれたので、僕は思わずいい気持になって、ああ、いい気持ちだ、いい気持ちだ、こんな素敵なことは生まれてはじめてだ、と叫ぼうとしましたが、その言葉の途中で洋子の唇でふさがれて、あっと言って、ああっ、となって思いもかけずあんなところからなにか温かいものをドーと出してしまいました。

出ちゃったんだもんね、僕……

そして、洋子と僕はいつまでも桜の樹にしがみつくセミのようにしがみついたまま、朝までなにも言わずに抱き合って眠り続けました。

のぶいっちゃんは一人でどこか遠くの砂丘の陰でふてくされたまま寝ているようでした。



隣家で鳴く鳩時計で目覚める午睡かな 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-05 15:21

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第13回



bowyow megalomania theater vol.1


洋子はいつまでも泣きやまずにいる僕を、そっと抱きしめてくれました。

頬ずりしてくれました。キスをしてくれました。

のぶいっちゃんに「あっちへ行け」と言ってくれました。

のぶいっちゃんがふてくされてどこかへ行ってしまうと、洋子は僕を砂丘と砂丘のくぼみに連れて行っていっしょに添い寝をしてくれました。

僕は上着を取って、下着も脱いで、パンツも脱いで、ふりちんになって洋子にしがみつきました。


淳作と直筆サイン入りの団扇で涼をとる 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-03 20:18

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第12回



bowyow megalomania theater vol.1


「洋子って君の女なの?」

と聞くと、のぶいっちゃんは、

「あったりメエよ。とっくの昔からおれの女よ。おれの言うことは何でも聞く、何でもするんだぞお」

といばっているので、洋子に向かって、

「ほんとうに洋子はのぶいっちゃんの言うとおりにするの?」

と聞くと、小さく左右にかぶりを振りましたので、

「洋子は違うと言ってるぞ」

と言うと、のぶいっちゃんは怒り狂って僕にのしかかってきました。

それからまたしてものぶいっちゃんは僕をさんざんなぐったりけったりしましたので、僕はたくさんの血がどくどくと出て、あざもできてとても痛かったけれど、じーっと我慢をしていました。

そしてエーン、エーン、エーン、と泣きました。

エーン、エーン、エーン、痛いおお、痛いおお、と泣きました。



狼にロ短調ソナタ弾く少女かな 蝶人



by amadeusjapan | 2011-09-02 17:39

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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