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晴風万里

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カエルの歌が聞こえてくるか



鎌倉ちょっと不思議な物語第330回 &バガテル-そんな私のここだけの話op.192


 毎年太刀洗の朝夷奈峠の三郎の滝を登った原っぱにあるお玉が池を整備してカエルの産卵の環境を整えているのだが、今年は第一現場で2月14日にそれを見つけた。(写真は第2現場の小さな泉)

 通例だと第1現場、第2現場、第3現場の3か所でまずアカガエル、次いでヒキガエルの産卵が行われるのだが、今年は(も)異常気候の所為か例年よりだいぶ遅れているようだ。

 2月末に第3現場でもアカガエルの卵を見かけたが、去年の台風でグチャグチャになってしまった第2現場はあまり期待できないだろう。

 20年前、この第2現場では数多くの雌雄のヒキガエルが奇声を発しながら激しく交尾していたが、あれらの巨大なカエルたちはその後何処へ消え去ってしまったんだろう。

 息子は自然の力は偉大だから、放置しておいても産卵は行われるというのだが、やはり年老いた私が1月の末か遅くとも如月のはじめにスコップで泥や落葉をすくい上げ、きれいな水がある分量で溜るようにしておかないとすこやかな産卵はもたらされないと信じているのである。

    お玉が滅ぶか私が滅ぶかどちらが先に駈けつくか 蝶人



by amadeusjapan | 2015-03-09 10:07 | 鎌倉案内

蛍の歌~「これでも詩かよ」第86番



ある晴れた日に第242回


ホータル来い ホータル恋 
光光光光光光光光
ホータル来い ホータル恋 
ピカピカピカピカ

点滅点滅点滅点滅
雄雌雄雌雄雌雄雌
電光影裏斬夏風
点滅点滅点滅点滅

闇の奥より現れて
強く弱く強く弱く 
かわるがわる愛を囁く
17歳の恋のごとく

ホータル来い ホータル恋 
光光光光光光光光
ホータル来い ホータル恋 
ピカピカピカピカ

点滅点滅点滅点滅
雄雌雄雌雄雌雄雌
電光影裏斬夏風
点滅点滅点滅点滅


なにゆえに集団自衛権をごり押しするこの国をいつでも戦争できる国に作り変えるため 蝶人



by amadeusjapan | 2014-06-07 10:51 | 詩歌

冬の日の朝夷奈峠



「これでも詩かよ」第58番&ある晴れた日に第194回


朝夷奈峠を登って、熊野神社を通って麓まで戻ってくるあいだに、いろんなことが起こる。

春まだ浅い日の朝まだき、水たまりに忽然とあらわれて交尾し始めたカエルたち。

ある夏の日、大発生して狂ったように飛び回るルリシジミたち。

ある秋の夕べ、突然星月日と歌いはじめたサンコウチョウ。

そしてまだ松の内の今日の午後、いきなりバチバチと爆ぜるような音と共に、
枯れた樹木の梢から豌豆の鞘のようなものが降ってきた。

それらはバチバチバチバチと爆ぜながら、一斉に降ってくる。

どこまで行っても、私の頭めがけて、次々に降ってくる。

私は立ち止り、

その豌豆の鞘が立てる不思議な音を、それがなにかの啓示であるように耳を傾けていた。


なにゆえにかくまで時代は閉塞するか三橋美智也よ「夕焼けとんび」を歌え 蝶人



by amadeusjapan | 2014-01-13 11:33 | 詩歌

オタマジャクシはカエルの子

バガテル-そんな私のここだけの話op.167&鎌倉ちょっと不思議な物語第285回

2週間ほど自宅の水盤で飼っていたオタマジャクシを細君と一緒に太刀洗へ行って元の水たまりに放してやった。本当は現地のオタマジャクシが事故で絶滅したりした際に備えて毎年こうやって最低数の個体を確保しているのであるが、日当たりのよい東側の窓辺に置いたのでどんどん成長してしまい、なかには手足が伸びて水盤の外に出ようとする元気のいいやつも現れたから、これは已むをえない処置であった。

朝夷奈峠を登りはじめると、たくさんのカラスがぎゃあぎゃあとうるさく鳴きながら飛んでいた。私はミズキの木の上から私たちの登場を警戒しながら見守っている彼奴等に礫をお見舞いしてやったが、かつての左腕のエースも腕がなまって当たらない。

カラスは逃げようともせず私を嘲笑うようにガアガアと鳴き騒ぐ。私は自分が手塩にかけたオタマジャクシを、彼奴等がもしやムシャムシャと食っているのではなかろうかと心配したが、それは杞憂であったらしい。数百匹いたオタマは数こそ減ったが、だいぶ大きくなって健在だったので胸をなでおろした。

朝夷奈峠にはむかしからヒキガエル、ヤマアカガエル、ツチガエルの3種類のカエルが自生していているが、産卵に適した流れの無い水たまりがなければいくら交尾しても子孫を残すことはできない。

そこで私は毎年1月の末に家からスコップをかついで峠道を登り、枯れることの無い小さな泉にたまった落ち葉を丁寧に掻きだし、その周辺の水たまりを深く掘って雨水がたまりやすくしておいてやる。すると春にはまだ早い2月の中旬のある日、草むらや地面の下に冬眠していたカエルたちがその泉や水たまりにぬるぬるした灰色の卵を産みつけるのである。

ことしはヒキガエルとヤマアカガエルが3ヶ所で産卵してくれた。


うかうかと浮かれ出けるアゲハチョウまだ春浅き朝夷奈峠に 蝶人



オタマジャクシはカエルの子 後篇

バガテル-そんな私のここだけの話op.168&鎌倉ちょっと不思議な物語第286回


今から10年ほど前のある日、突然このヒキガエルの雌雄が10匹ほど峠道の水たまりに現れて見境なしに交尾していたことがあった。

「ぐええ、ぐええ」と奇声を上げながら雄が雌を追いかけまわし、背後からのしかかる異様な春の祭典を半日がかりで楽しく見物したものだが、そのあとには大量の卵が産み残され、なかにはちょん切れてひものようになったのもあった。

しかし時ならぬ春の祭典はたった1日で終わり、交尾軍団はその翌日からは杳としてその行方を絶つのである。

残されたヒキガエルの卵は人の腸のように長く繋がっていて、ゼラチン状の箱の内部には孵化する前の黒い卵がひとつずつ眠っている。ヤマアカガエルの卵は円錐状の小さな透明の山のようになったゼラチンの中に、ヒキガエルよりもうんと小さい黒点が入っているのだが、この黒い点が♪オタマジャクシはカエルの子、のお玉になるのである。

彼らがなぜか単独行を好まず、常に仲間とひとつところに凝集するのは、孤を嫌い衆になずむわが大和民族の性癖に似てまことに不愉快だが、狭い水域に一目数百匹という高密度で蠢くオタマジャクシは頭を軸にしてゆらゆら動き回って愛らしい。

しかし無数とまで思われたオタマジャクシも、カラスやヘビ、そして最大の天敵である人間どもの手にかかってどんどん数が減ってゆく。

人間たちの中には彼らの生育環境を無視してオタマジャクシを自宅へ持ち帰って無惨な最期を迎えさせたり、オートバイや4輪駆動車で野原に侵入して泉や水たまりもろとも殺戮を恣にする凶悪犯がいるので油断できない。

けれどもよしんば獰猛なる殺人鬼の魔手から辛うじて逃れることができたとしても、肉食の彼らにはカツオブシなどの好個の餌がてぢかにないために、生き延びるための共食いという死と恐怖の通過儀礼が待ち構えている。

親ガエルの産卵以来オタマジャクシが晴れて小さなカエルとなって水たまりを離れるのはおよそ半年後だが、その確率は極めて小さく、おそらく200に1の割合だろう。

その奇跡の1をあらしめるためには、毎年三角形の底辺部が途絶することなく維持され、出来得べくんば豊かに富ましめて保たらねばならぬ。かくして余のオタマジャクシ存続活動は細く長く、およそ30年の歴史を閲したのであった。


百千のオタマジャクシが陽に向かい「早くカエルになりたい」と叫ぶ 蝶人



by amadeusjapan | 2013-05-26 09:45 | 鎌倉案内

おたまじゃくしはカエルの子?



そんな私のここだけの話 バガテルop162&鎌倉ちょっと不思議な物語第272回

毎年1月の末か2月の頭には近所の原っぱでカエルが産卵するので、その環境を整えてやることにしている。といっても大したことではない。スコップで水たまりのごみや落ち葉や泥を掻きだし、清らかな水がある程度以上にたまるようにしておいてやるのである。

もし私がこのささやかな作業を怠れば、カエルは産卵できないし、仮に出来てもすぐに死滅してしまうだろう。

先日の晴れた日の午後、もしやと思ってその場所を見に行くと、なんと3ヶ所でゲル状の卵が産みつけられていた。昔はこの同じ場所でたくさんの巨大なヒキガエルが真っ昼間からゲコゲコと声を上げて盛大に交尾してハイキング客を驚かせたものだが、数年前から姿を見せなくなり、いま産卵しているのは小型のアカガエルだ。

私がいちばん大事にしている小さな湧水のある泉には、おりしも雌のアカガエルの上に雄が乗っかって戯れており、その傍にひと固まりの卵があった。ねばねばした白く半透明の薄皮の中には小さな黒点があるが、これが次第に大きくなっておたまじゃくしになるのである。

そのおたまがまたどんどん成長してカエルになるのは初夏の頃だが、それまでなんとか無事に育ってほしいものである。


おたまじゃくしはカエルの子私の孫でもあるわいな 蝶人


◎「佐々木健展」は2月23日まで開催中。明日午後5時から「絵とか建築の話」(仮)トークあり。http://twitpic.com/c18o04



by amadeusjapan | 2013-02-16 09:11 | 鎌倉案内

続 狂言綺語


バガテルop138


今年のセミが鳴かないとか少ないとか騒いでいるが、こと鎌倉の十二所地区に限ってはそんなことはない。当地で例年ニイニイゼミが鳴き出すのは7月の4日前後であるが、今年のニイニイゼミの初鳴きは6月27日でいつもより早く、その日から今日までたくさん鳴き騒いでいる。ニイニイからアブラゼミの間には梅と桜ほどではないが少し間隔があり、その合間を縫ってカナカナが鳴き出し、本格的な盛夏の到来を告げるアブラゼミやミンミンゼミが鳴くのは、当地では7月22から29日の間である。

以上は小生の過去6年間のデータに基づいて書いているが、もし可愛いセミたちの今年の全国的な発生が遅れていたり、最悪の場合発生数が少なかったとしたら、それは累積温度やまして福島第一原発の累積放射能せいなどではなく、数年前の発生個体数が少なかったからだと考えられる。

日本経済新聞には俳句と和歌の投稿欄がある。かつて私は黒田杏子という女性が選句する「日経俳壇」に拙い一句を「葉書」で投稿して採用されたことがあった。最近インターネットでも投稿できるようになったというのでまたやってみようとしたら、2名の選者のうちくだんの黒田女史だけはネット投稿を認めていないというので驚くとともに、その見識の高さに脱帽した次第である。所詮横書きは俳句にはなじまないと彼女はよく知っているのだ。

残念ながら今年のイチローの200本安打は絶望的だ。どんな天才にも末路はくる。晩節を汚さずに潔く引退するか、それとも松井のようにぼろぼろになってどさ回りの道を選ぶか。私は苦闘する後者の姿を見たい。


丸印は性交ありし日か荷風日記 蝶人



by amadeusjapan | 2011-07-23 13:28 | 自然

今夜もウナギはダンス、ダンス、ダンス――滑川夜話最終回



バガテルop132&鎌倉ちょっと不思議な物語第228回

この生命力みなぎる生物についての雑文を書いてからちょうど1か月が経ちましたので、後日譚の後日譚を書いておきましょう。

たしか前回は近所の植木屋のKさんが、カーバイドを入手したらそれを駆使して可愛いウナギ犬を逮捕する計画をたてたところ、までだったと思いますが、さいわいなことに今のところカーバイド爆発計画は不発に終わり、私の愛するウナギたちは、夜な夜な愛の交歓を続けています。

この節は日が落ちるのが早くなったので、夕方6時半に黄昏迫る滑川まで行ってみましたら、あれから一段と大きく長くなった2匹の大ウナギが、追いつ追われつ全身をぐるりぐるりと回転させながら、ウサギならぬウナギのダンスを見せてくれました。

楢の木のほの暗い木陰でひとところにかたまって背びれだけをひらひらさせているハヤたちも、息をひそめて彼らの舞踏を見つめています。

そこで私は、音痴であるのをものともせず、ア・カペラで高らかに歌いあげました。


♪ソソラソラソラウナギノダンス ソソラソラソラナメリカワダンス


6小節を歌い終わってまた道端の滑川を見下ろしていると、そこへちょうど近所のTさんが通りかかりました。Tさんは昔学校の教師をしていましたが、いまは悠々自適のご身分です。私が

「この世紀の見世物をご覧なさいな」

と勧めると、しばらく夢中になって見物しておられましたが、突然携帯を取り出しましたので、このオオウナギの饗宴をデジカメに記録しておこうとするのかと思ったら、

「そういえば最近私の家の庭にカルガモの親子が団体でまぎれこんできたんですよ」

と言って、可愛いいカルガモちゃんたちの写真を見せてくださいました。
けれどどうやらこの方は、ウナギよりもカルガモちゃんが可愛いいらしいので、私はちょっとがっかりしました。

Tさんが去ってしばらくすると、今度は有名な日本画家の小泉淳作先生が腰をくの字に折り曲げながら、ゆっくりこちらにやって来ました。
ちなみに先生は今月27日まで日本橋高島屋で東大寺本坊襖絵完成を記念した一大展覧会を開催されています。そこで私は、

「先生、先生、ウナギですよ。ウナギがダンスしておりますよ」

と申し上げようとしたのですが、折悪しくそこへ鎌倉駅行のバスが滑り込んできたので、白髪の魔法使いのような先生の姿は、疾走する京急バスのドアの奥に飲み込まれてしまったのでした。

魔法使いの棒一閃オオウナギぐるりぐるり 茫洋



by amadeusjapan | 2010-09-21 15:59 | 自然

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第27回



bowyow megalomania theater vol.1

公平君と洋子と文枝と僕も、のぶいっちゃんを助けようと手に手に近くに転がっていた石ころや棒ぎれを持って、おまわりの頭や顔や手や足をてんでにぶん殴りました。

思いがけない逆襲に驚いたおまわりは、びっくり仰天、慌てふためいて逃げ出しました。あんまりあわてたからでしょう、峠のそま道の真ん中には、なにやらものものしい物体が残されていました。それは警官が持っていたピストルと銃弾ベルトでした。

「へええ、ピストルじゃないか。本物のピストルだ! すごいじゃん」

「へええ、これが赤塚不二夫の漫画に出てきたピストルかあ。前から一度こいつにさわってみたかったんだ」

と、のぶいっちゃんとひとはるちゃんは狂ったように喜びました。

「おいおい、ちょっと僕にも触らせてくれよ」

と公平君が頼んでも、のぶいっちゃんとひとはるちゃんは、ピストルとガンベルトを握りしめ、まるでカーク・ダグラスとバート・ランカスターになったように飛び跳ねています。

それから僕たちは、かわりばんこにずしりと重い拳銃をベルトに差したり、楢の木のてっぺに止まっていたフクロウに狙いを定めたりしながら、3時間もかけてようやく懐かしのわが家に辿りついたのでした。

今日はほんとうにくたびれました。


油蝉リュリュリュ晩夏流る 茫洋



by amadeusjapan | 2010-09-16 16:50

真夏の夜のオオウナギ 後日譚



鎌倉ちょっと不思議な物語第226回&バガテルop131
栗の木の木下闇抜けて大ウナギ見にゆく 茫洋


昨夜2個の仕掛けが撤去された滑川を訪れた私は、何回見直してもウナギの姿が見られないのでがっかりして橋のたもとを立ち去ろうとした。

その時、息を切らして駆けつける背の低い中年の男性の姿があった。この人物には見覚えがある。私の家の近所に住んでいる植木屋のKさん推定55歳で前夜のKさんの弟である。

縮のシャツとステテコをはいたKさんは食い入るように川面を見つめている。「いくら探してももういませんよ。昨夜ヤナを仕掛けた人たちが全部捕まえてしまったんだから」
と私が教えると、Kさんは私の顔を見て

「ところがね、ヤナは空っぽだったそうだ」

と言ったので、私はびっくりすると同時に、

「さすがは滑川のオオウナギ、やるもんだね」
とひそかに舌を巻いたのだった

「ウナギも馬鹿じゃない。危険を察知して上流に逃げたんだ。しかし今はウナギの産卵期でね。1匹のオオウナギのオスがいるところには何匹かのメスウナギが必ずいるんです。よーし、こうしちゃいられん。カーバイドの手配をしなくちゃ」

「エッ、爆弾を川に投げ込むんじゃないでしょうね?」

「とんでもない。カーバイドランプで川を照らすと、魚はみんな寄ってくる。そいつを一網打尽にするんですよ」

と言い捨てて、Kさんは脱兎のごとく家にとって返した。

きっとこれから新兵器のアセチレンガスを入手して、巨大ウナギを自分のものししようとするのでしょう。

新居に引っ越したばかりのKさんですが、急な病気で細君を亡くされたばかり。前夜Kさんの兄さんが、

「おいらは身内に不幸があったばっかりだから殺生はしたくない」

と言っていたのはそのことだったのですが、弟のKさんはその弔い合戦を、罪もないウナギに対して仕掛けようとするのでしょうか。

一難去ってまた一難。私はオオウナギたちの身の安全を祈りつつとぼとぼと家路をたどったことでした。


三日月や雌雄を決する大ウナギ 茫洋



by amadeusjapan | 2010-08-22 19:49 | 自然

真夏の夜のオオウナギ 後篇



鎌倉ちょっと不思議な物語第225回&バガテルop130


息子が都会に去った翌日からも、私は夜になると例の小川にいそいそと足を運んでいた。

1メートル超の大ウナギは相変わらず健在で、毎晩見事な反転と跳躍を見せてくれるが、昨夜は30センチに満たない小ウナギもその近くで泳いでいた。どうやらこの界隈はかなりの数のウナギが棲息しているらしい。

ふと見ると2,3人の中年男がワイワイ騒いでいる。
やはり私と同じようにウナギ見物に来たのかと思っていたら、そうではない。あれを捕まえようとひそひそ相談しているのである。

聞くともなく耳を傾けていると、最近滑川の水がきれいになったので、アユが遡上するようになり、そのアユを追ってウナギが海から上るようになったらしい。ハヤはよく見かけるがアユまで棲んでいるとはしらなんだ。

なんでも今年はこの近所では5匹のウナギが目撃され、前夜までにそのうちすでに3匹は捕獲された。残っているのはこのオオウナギを含めた2匹である。よって一刻も早くこの伝説の大ウナギをつかまえたい、と焦り逸っているのであった。

よく見ればそのうちの一人はすでにヤナを持っている。こいつにミミズをしかけて流れに伏せておけば間違いなく仕掛けにかかるであろう、と地元はえぬきのおやじさんが、ヤナを持った若い衆に教えを垂れている。

「俺はこないだ親戚で不幸があったから、今夜は殺生したくねええんだ。でもあんたにはやり方を教えてやるよ。ヤナなんかより橋の上から糸を垂らして直接釣ればいいんだよ。すぐにとびついてくるよ」
と自信ありげに語っているのは、町内会の役員のKさん65歳だ。

「でも、餌がないんや。餌はどうしたらええんや」

と大阪弁で喚いているのは、神社の麓に住んでいる新参者のAさん推定40歳だ。こいつはオオウナギをモノにしたいという欲望で目が血走っていた。

「それじやあ、これからオイラが懐中電灯を持ってくるから、一緒に餌のミミズを獲りに行こう。オイラも付き合ってやるよ」
と言った後で、Kさんがつぶやいた。

「でも、あいつ、なんだかうれしそうに泳いでいるじゃないか。このままにしといてもいいんじゃないか……」

そうだよね。君はよくわかってるじゃないか。
それにいくら天然自然の国産大ウナギでも、あれくらい大きくなった奴は食べても全然美味くないからね……。

さてその翌日、まだ大ウナギの饗宴は続いているのかしら、と恐る恐る滑川に足を運んだら、ウナギなんぞ大も、中も、小すら影も形もなかった。

その代わりに立派なヤナが2か所に仕掛けられていたので、きっと半月間にわたって孤高の五風十雨居士の疲れた心を慰藉してくれた本渓流今季最後のウナギたちは、悲しいかな一網打尽にされてしまったのあらう。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。


健ちゃんが逃がしてやりし大ウナギ今宵も躍るよ滑川の淵 茫洋



by amadeusjapan | 2010-08-21 20:13 | 自然

あまでうすが綴る音楽と本と映画と詩とエッセイ
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